ヒントは情熱の丘

夕日ゆうや

難しいお題でした。

 ちまたで噂の情熱の丘が、そこにはあった。

 曰く、男たちの祭典。最高のコンビである友情を讃える丘。

 その二人は永遠に仲良くすることを決め、一本の桜を植えたそうだ。

 古くから言い伝えられ、植えられた桜も、もう樹齢二百年を超えている。


 そんな昔話を鼻を鳴らしながら聞いていた俺は通学路を歩く。

「噂なんて噂でしかないんだよ」

「そうかな。おれは信じたいけど?」

 久光ひさみつはカラカラと笑う。

 久光はこういった噂話が大好きだ。

「まあ、お前なら好きだろうな」

「ははは。相変わらず堅物だな、秋一しゅういちは」

 バシバシと俺の背中を叩く久光。

「情熱に満ちた丘、か……」

 俺には分からないジンクスだな。

「まったく、お前はいつも信じないな」

「それで叶うなら、誰でもやっているだろ?」

「まー。そのへんはご愛敬ってことで」

 いい加減な話だな。

「失敗もしているんじゃないか」

「信仰心が薄いとそうなるって噂だぜ?」

「じゃあ、俺には関係ないな」

「ははは。ちげーねー」

 またもケラケラと笑う久光。


 そんなある日、久光が事故に遭った。

 もう目覚めることはないらしい。

 最後にうわごとのように『ヒントは情熱の丘にある』と言っていたらしい。

 すがる思いで情熱の丘にやってきたが、何もない。

 俺はなんでこんなところに来てしまったのだろう。

 信仰心なんて一ミリもないのに。

 落ち込み、地面に視線を向ける。

 そこには掘り返された跡があった。

「これは……!」

 掘り返すと、そこにはたくさんの写真と手紙が書いてあった。

 それは仲間への友情だった。

 久光は俺との思い出をここに埋めていたのだ。

 俺に信仰心がなくとも、久光にとっては違った。

 二人分をカバーできるほどの信仰心だったのかもしれない。

「久光……」

 俺は彼を想う。

 また話がしたい。

 スマホが振動し、彼の親から連絡が入る。

「え。久光が?」

 届いた連絡に俺は驚く。

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