無駄という名の宝箱 ―AIと青春がひらく、20の「学び直し」物語―
Algo Lighter アルゴライター
プロローグ 無駄という名の宝箱
「これ、将来使うんですか?」
教室の後ろの席から、誰かがつぶやいた。
その日先生が黒板に書いていたのは、漢字の筆順と活用表。それから、三角形の面積の求め方。
すぐそばの窓の外では、風に揺れる桜の花びらがスマートウィンドウに反射して、ひらりと空へ舞い上がっていた。
かつて私たちは、いくつもの知識を「使わないから」と切り捨ててきた。
逆上がり、地図記号、ローマ数字。
古文、リコーダー、そろばん……。
覚えたって、役に立たない。
やったって、意味がない。
便利なAIがいれば、もっと効率よく生きられる。
そう思っていた。
いや、今でも、どこかで思っている。
でも、ふとした瞬間に気づくことがある。
何気なく口ずさんだ童謡の歌詞が、あのとき習った文語体だったり。
道に迷ったときや災害時に、記憶の片隅にある地図記号が、行き先を教えてくれたり。
誰かとの約束を思い出したとき、その約束の形が、「学んだはずのこと」に似ていたり。
もしかすると、“無駄”だと思っていた学びは、
私たちの未来のどこかで、小さく光を放っているのかもしれない。
この本に収められたのは、
そんな“無駄という名の宝箱”をひとつずつ開けていく、20の物語。
AIと出会った少年少女たちが、「使われなかった知識」に再び手を伸ばし、
新しい世界との〈約束〉を結ぶ――そんな短編集です。
さあ、ページをめくってください。
あなたが「もう忘れた」と思っていた何かが、きっとこの先で待っています。
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