第56話 二者二様
バッ バルガンに勝った。
今迄誰もが勝てなかった、あのバルガンに勝った。
私、ロマリスは驚き感動している。
通信水晶で送られてきた映像。
ハデルという少年は……本物の女神の戦士だった。
あのバルガンを圧倒する強さ。
どう考えても勇者以上。
あの鎧を誰も身に着ける事が出来なかったのは女神の戦士専用の装備だったのか。
女神の戦士は勇者以上の貴人。
今後、どう接していくのか十大司教と決めねば、私が教皇の時代にまさか女神の戦士が生まれるなんて……なんという僥倖でしょうか?
これも女神様の思し召し……まずは駆けつけるとしましょう。
◆◆◆
「ガイロック……俺は……」
「目を覚ましたかバルガン! 今は何もいうな申し開きは魔王様に伝えるのだ」
あのバルガンが震えている。
傍若無人……魔族の勇者とも呼ばれた男が心が抉られたようだ。
だが、分からなくも無い。
私が見たのは一方的な暴力。
あの状態を楽しいなんて言えるなら、かなりのマゾだ。
成す術もなく、ひたすら殴られる。
逃げたくても逃げせて貰えず、押さえつけられただひたすら暴力を浴び続ける。
これで無力感を感じない奴なんていない。
今のバルガンは前歯が何本も抜け鼻の骨は折れている。
顏も痣だらけで腫れあがっている。
バルガンは強い。
だからこそ、こんな一方的な暴力を浴びせられた事は無い。
もしかしたら、バルガンはもう戦えないかもしれない。
それより……彼奴がダンジョンに乗り込んで来た時に止められる存在は居るのか。
私じゃ無理だ。
今回は人質がとれたからどうにかなった。
もし、あの場所に瀕死の勇者たちが居なければ。
バルガンを見棄てて逃げるしかなかった。
きっと誰も止められない。
だが、彼奴を止められなければ……魔王様が死ぬ未来しかない。
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