第25話 ギルドにて②

今日も冒険者ギルドに経過報告にきている。


ギルドの定期報告だ。


前回のように別室に通されると、ギルドマスターと受付嬢が待っていた。


「命懸けの仕事なのによく続きますね」


「皆さんには良くして貰っています。本当に皆さん良い人達ばかりですよ」


「そんな訳無いだろう? 実際に、前回の報告では2回も死に掛けただろうが! それで? その後はどうだ?」


「まだ、ダンジョンに潜る前ですから、そうそう死ぬ様な事はありませんよ! 地上で弱い魔物を狩ったり、雑用をこなすだけです。ダンジョンに潜る前の調整状態です」


「そうか、それなら良いが……そう言えば、その……勇者パーティのメンバーと恋仲になっているという噂があるんだが、その辺はどうよ!」


まぁ、揶揄われてはいるけど、それだけだよな。


「あはははっ、無いですよ! 全員が勇者パーティメンバーですよ? 僕みたいな一般人本気で相手するわけ無いじゃないですか?」


仲間として認めてくれたから優しいだけ。


勘違いしちゃ不味いし、気まずくなる。


「そうは言うが、お前が剣聖のリメルや賢者のリリアと腕を組んで歩いて所を皆が見ている。 まるでお前を誘惑するようになかなかの薄着をしていると聞くが違うのか?」


「皆さん、多分僕を揶揄っているだけですよ? 確かに腕を組んだり、膝の上に乘られたりしますが、あれは皆さんが僕を揶揄っているだけです」


確かに、そう見られるけど……うん、あれはスキンシップだ。


僕がいる施設でも世話焼きの女の子は凄く優しくしてくれた。


それと同じ事だ。


相手は勇者パーティだから、誰にでも優しくしてくれるだけ。


『僕だけが特別な訳じゃない』


「本当にそうなのか?」


「私は違うと思いますが……」


「いや、仮にも勇者パーティのメンバーですよ? そんなわけないじゃないですか?」


「「そう(か)?」」


勇者パーティなんだから、誰にでも優しいだけだ。


◆◆◆


「今の話、どう思う?」


「絶対に勘違いじゃないでしょう」


ハデルが去ったあとギルドの受付嬢の私、ヘレンとギルマスのハルバートと話し合っていました。


「やはりそう思うよな」


「どう考えても、あの様子で勘違いは無いと思います」


勇者パーティのリメルさんもリリアさんもやたらプライドが高い方です。


普通に考えて、好きでもない男に媚びなんて売る筈がありません。


それにあの目……


以前の彼女達は『冒険者をクズでも見るような』目で見ていました。


ですが、ハデルに対しては『愛おしいような者を見る目』で見ているように見えます。


最初こそひどい扱いをされていましたが、街中で見かけるリメル様やリリア様はどう見てもハデルを恋人扱いしている様にしか見えません。


下着が見えるような、あんな服装…….そうでなくてはする筈がありません。


「絶対にそうだよな? 正直言えば頭が痛い」


「お気持ちはお察しします」


勇者パーティが仲が良いのは良いのですが、問題なのはハデルを取り合い、揉めているのではないか? という事です。


実際にリメル様とリリア様はハデルを挟んで揉めているのをよく見かけられていますし、大きな声で激しく罵り合っている場面もあります。


聖女のマリアンヌ様もハデルと一緒に以前とは違い、児童施設に慰問に足を運んでいます。


今迄、派遣した冒険者でこんな扱いされた人物は居ません。


ですが、更に問題なのは勇者のライト様にボーイズラブの疑惑が掛かっている事です。


やたらと街中でもハデルにひっつき、過剰なスキンシップを繰り返しています。


「まぁ、問題は沢山あるが、クビにならないだけよしとするか?」


「そうですね……」


そう思うしかありませんね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る