からす山
タマハガネ
からす山
名古屋市の東山線を東に東にと乗っていくと、あるところから地下鉄の癖にどういうわけか車両が地上を走り始める。そしてそこからしばらく乗っていくと、終点の藤が丘駅に着く。ここでリニモというモノレールに乗って更に東に行けば、トヨタの博物館なんかがあり、それはそれで面白いのだが、ここであえて西側に歩いてみることをおすすめする。だいたい一キロメートルも歩いて行くと、北の方に背の低い山を見つけることができるはずだ。その山は「からす山」と呼ばれている。
からす山は、標高がたったの七二メートル。あまりにも小さな山であるから、山の敷地と呼べる範囲よりも、その隣にある明徳公園の敷地の方が広いくらいである。からす山という名前ではあるが、その実、敷地は猫の額というわけである。
ではなぜこの山が「からす山」と呼ばれているのか。その由来はあまり知られていないが、実はからす山の近辺にひっそりと生息しているカラスがいることに由来する。
その名前は「マメカラス」という。学名はCorvus parvus。基本的にカラスと同じような見た目をしているが、特徴的なのはそのサイズにある。マメカラスは名前の通り、普通のカラスに比べて身体が小さく、体長が一五センチほどしかない。これはスズメと同じくらいのサイズであり、実際、スズメのようなぷくぷくと丸っこい体と短いくちばしがなんとも愛らしい。身体が小さいため、鳴き声も甲高く、さえずりと呼ぶのに近いような清らかな声で鳴く。
基本は群れで生活しており、山に自生している木の実や小さな虫を食べる。天敵は自分より大きな鳥である。そのため、普通のカラスに時折どこかへ連れて行かれてしまうことさえある。
羽が小さく、あまり長い距離が飛べないことと、天敵が多すぎる関係で、生息域は限られ、東海地方にかなり限定的に生息している。しかも鳥たちの生活環境の縮小の煽りを受けて、マメカラスは徐々にその数を減らしている。まさに絶滅の危機に瀕している種であると言えるが、からす山では、管理団体がマメカラスの保護活動に努めているため、まだ見ることが可能だ。
もし暇だったら、ぜひ訪れてみてほしい。見つけるのにクロウするようになる前に。
からす山 タマハガネ @t4m4ha4g4ne
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