第8話 先人の言葉

 先人は言った。

 さよならだけが人生だと。

 10代の時はそう思っていた。

 性格があわない人とはもうこれっきりなんだろうなって思っていた。


 だからアドレス帳のほとんどを消した。

 だって空しかったから。

 繋がっていること。


 今まで自分がやってきたことすべてが。

 意味を為さない。


 人生は出会っては別れての繰り返しだと思っていた。

 けれど、再会を知った。

 田舎だからなのかもしれない。


 本当にうれしかった。

 私のことを覚えててくれて、きっと空しいという感情も知ってくれて。

 私の体が弱いことも知ってくれている。

 どこが弱いとか覚えてくれているとは思わなかった。

 友人はすごい。

 本当に嬉しい。

 こんなに恵まれていることがあるだろうか。


 都会の人は忙しい。

 確かにサヨナラが日常で、それで構成されているのかもしれない。

 いつだって辞令というものが出れば県を跨いでいなくなってしまう。

 諸行無常であるし、簡潔に言うならば『サヨナラだけが人生だ』なのかもしれない。


 恵まれている私はそれだけだとは思わない。


 だって確実に私の心の中には一緒に過ごした友人や新卒の時に研鑽しあった同期の影響があるのだから。


 時は令和になった。もっと別の言葉が流行ればいいなと思う。

 だって繋がろうと思えばSNSでつながれるのだから。

 どんなに忙しくても。


 大丈夫。


 相手が自分のことを覚えていなくたってあなたが覚えていればいい。

 だって大切な相手だったんでしょう?

 自分によい影響を与えてくれた人なのだから。

 ムリに忘れることもない。


 ただ感謝していつか繋がれそうなら繋がって。


 飲み会でもSNSでもいい。


 伝えられることは相手の余裕があるときに伝えるといい。


 こんな不景気な日本だけれども、

 心だけは豊かに生きて行ってほしい。

 綺麗事かな?

 それでもいいよ。

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