第6話【夜のペンション】

〇 函館駅前(昼)


6人が集合している。

キャリーケース、リュック、手土産。

旅行モードのテンション。


もえ

「まさかほんとにペンション貸し切っちゃうとはね!」


あこ

「うちの叔父さんがやってるの。

空いてたからって格安で貸してくれて!」


翔太

(小声で)

「うわ…こういうノリ、

まじで彼氏彼女感出るやつ…」


ゆい子

「言ったな翔太、それ本人の前で言えるの?」


翔太

「今、言ったよ?」


(みんな笑いながら、旅がスタートする)



〇 函館・ベイエリア(夕方)


6人が自由に観光。グループが3組に分かれて行動している。


・力丸&もえ


港沿いのベンチで一息。


もえ

「懐かしいね、こういうの。

高校の時、修学旅行でも来たよね?」


力丸

「……お前さ、今でもあの時のこと、

思い出したりすんの?」


もえ

「どうかな。

でも、全部がいい思い出だったわけじゃないよ。」


力丸

「俺は……

あの頃のお前が、今でも一番“素”だった気がする。」


(少し沈黙。もえがその言葉に戸惑う)



・圭吾&あこ


坂道を歩きながら、夜景を目指している。


あこ

「うち、、

けっこう見た目コンプレックスあるんだよねー

写真とかほんと苦手で。」


圭吾

「嘘つけ。誰より楽しそうにピースしてたぞ、昼。」


あこ

(照れ笑い)

「見てたの?」


圭吾

「そりゃあ見るだろ。……いい表情してたし。」


(あこ、一瞬止まり、顔が赤くなる)



・翔太&ゆい子


赤レンガ倉庫の近くで休憩。ソフトクリームを食べながら。


翔太

「ゆい子さんって、どうして舞台やってんすか?」


ゆい子

「……好きだった人が舞台の人だったの。

叶わなかったけど。」


翔太

「ふーん。」


ゆい子

「でも今は、違う理由で続けてる。

今好きな人が…そっちにいるから。」


翔太

(冗談っぽく)

「それ、俺じゃないの?」


ゆい子

(無表情で)

「違う。」


(翔太、笑ってごまかすが、どこか刺さった様子)



〇 ペンション・夜(室内)


リビングで6人が鍋を囲んでいる。飲み会ムード。酔いが回り始めている。


もえ

「この鍋、マジでうまいんだけど!

力丸、結婚したら料理できる男子だね。」


ゆい子

(冗談めかして)

「じゃあ、結婚すれば?高校の時みたいに!」


(みんな一瞬、笑って誤魔化すが、空気が少し変わる)


力丸

(冗談を返さず)

「……それ、言うことじゃないだろ。」


(沈黙。気まずい空気)



〇 ペンション・中庭(深夜)


外に出てきた圭吾ともえ。夜風が強い。


圭吾

「……俺、もう我慢するのやめようと思って。」


もえ

「何を?」


圭吾

「もえ、お前のこと好きだ。」


(もえ、言葉が出ない)


圭吾

「ずっと力丸がよぎって逃げてた。

でも、もう見てるだけじゃ嫌なんだよ。」


もえ

「圭吾…」


圭吾

「返事は今じゃなくていい。

けど、聞いて欲しかった。」



〇 ペンション・リビング(同時刻)


力丸がピアノを弾いている。静かに。隣にゆい子が座る。


ゆい子

「ねえ、力丸。私じゃ、だめかな?」


力丸

(止まらず弾き続ける)

「……だめじゃないよ。」


ゆい子

「でも、選ばないでしょ。

もえしか、見てないでしょ。」


(ピアノが止まる)


力丸

「……どうしてそう見える?」


ゆい子

「もう見ないようにしてるの。

辛いから。でも、あんたが優しくするたびに、

希望持っちゃうじゃん。」


(力丸、何も言えず俯く)



〇 ペンション・2階廊下


あこが、物音で目を覚まし、ふとドアを開ける。階段の下から圭吾ともえが戻ってくるのが見える。


(あこ、静かにドアを閉める)


あこ(心の声)

「やっぱり私じゃ、誰の心も揺らせないんだね。」



♪エンディング曲(ソロ:ゆい子)


🎵「優しくされるたび 強くなれたらいいのに

 ねえ、私を誰かの“選択肢”じゃなく

 一つのメロディにしてよ──」

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