3.

三人目は、隣町に住んでいる兄だった。


久しぶりの電話。

世間話の流れで、突然こう言った。


「何かあれば相談しろよ。……この前、河原で泣いてたろ。橋の上から見えたよ。声かけようか迷ったけどさ。」


趣味の動画を撮っていたときの話らしい。


俺はその日、一歩も外に出ていなかった。


「待って、その動画に俺、映ってたりしない!?」


「ん、ああ。お前だと気づいてカメラ止めたから一瞬だけど……映ってると思う。なんでそんなこと聞くの?」


「いいから!頼む、見せてくれ!」


数時間後、兄からLINEが来た。


「おかしいな…確かに、ここにいたのに……」


送られてきた動画には、風景だけが映っていた。

河川敷に“俺”はいなかった。


俺は兄に「しばらくはそこへ行くな」と必死でLINEを送った。何通も。

でも、既読はつかなかった。


数日後、兄は橋から転落して亡くなった。

風にあおられ、バランスを崩したらしい。


場所は、あの河川敷だった。

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