桃色
らいむぎ
桃色
桃色のマグカップ。
俺の一番のお気に入り。
表面には二匹のくまのイラスト。
いつ見ても、似てる。
でも、やっぱりあいつらの方が可愛いよな。
確かに俺には似合ってない。
こんな可愛いのは似合わない。
元々これは俺のものじゃない。
だけど、忘れたくなくて。
いつも、思い出せるように。
ずっと、守ってくれる気がして。
俺が、守ってやらなきゃいけなくて。
マグカップのひんやりとした感覚。
俺だけが感じてしまっていいんだろうか。
溜まったコーヒーから上がる湯気。
本当に温めたかったのは、これじゃない。
耳から聞こえる子どもの声色。
口から入る苦々しい後味。
桃色のマグカップの中で、否応なしにブレンドされて濁る。
「あ、そうだ」
引き出しから、スティックシュガーを取り出す。
真っ白の粉が、黒い液体に飲み込まれていく。
「もう、一緒に飲めるよな。」
昔を思い出すような、甘く優しい味がした。
桃色 らいむぎ @rai-mugi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます