情報共有と作戦
二日後、特異点冒険者たちは、前回の会議に使った部屋に集まって、それぞれが入手した情報を共有していた。一つ情報がでるたびに、その場の空気はだんだんと重くなっていった。
全員の情報が出そろったとき、カルアはため息をつき、深刻そうな面持ちで語りだした。
「つまり、今回の件は魔王軍のしわざである可能性が高い…、いや、高いどころか、ほぼ確定ですね」
ベイは腕を組みながら声を張り上げて言った。
「このままにしてたらまたいつくるか分からねえ!早いうちにこっちから仕掛けたほうがいいだろう!」
異議を唱える者はいない。ラズも静かに頷いた。相変わらずその後ろに立っているケイスも。
「同感だ。数百年間沈黙していた魔王軍が本格的に動き出した以上、躊躇っては居られない」
「…」
すると、カルアが杖を手に取り、横に振り払った。すると、テーブルの上に何かの地図のようなものが出現した。どうやら、魔族との
「作戦を練りましょう。私たちの手で、私たちの時代に、この戦争を終わらせます」
カルアは地図上に、しるしを置いた。
「魔王軍は魔王が住む魔王城以外にも、十の拠点を持ってます。それぞれがすさまじい戦力を保有していて、今回攻め込んできた魔族の集団もどこかの拠点から送り込まれたものだと推測されます」
「王都を陥落させかねない戦力を持つ組織が十個もあるの?」
「否、既に其の内の二つは破壊している。対処が必要なのは後8つだ」
不敵な笑みを浮かべるラズを横目に、カルアは軽く唇を噛み、顎に指を置いた。
「できれば、私たちで手分けして、相手の戦力が一つに集中しないようにしたいですね」
「なら、チームを分けようじゃないか!」
「そうしましょう」
そうして、魔王軍の拠点に攻め込むチームが決まった。
カルアとビヤレル。ニカリとニコリ。クレッシェンドにベイとラックス。そして、ラズとルロナ。
前回王都に攻め込んできて消耗しているであろう拠点には、一般的な兵士と冒険者を大勢送り込むことにしたらしい。
最低でも1チーム一つは拠点を破壊する。という方針のもと、それぞれのチームで作戦を立てることにした。
ルロナがラズとケイスの元へ行くと、ラズが笑顔で迎え入れた。ケイスの表情は一切変わることなく、感情がつかめない。
ルロナは一つ、二人に頼んだ。
「ファレナという魔法使いを同行させたいのですが、よろしいでしょうか」
そう、ファレナだ。今は宿のルロナが泊まっている部屋で休んでいるが、魔王軍の拠点は遠く、王都を出発してしまったらしばらくは帰ってくることができないだろう。だから、念のため、連れていきたいのだ。
ラズはその言葉を聞いて、口角を上げた。
「ファレナ…。ああ、噂の魔法使いか。かまわんぞ」
「噂?」
「スキルも特殊な魔法も使わずに山を消し去ってしまう程の力を持つとな」
「ええ、確かにそうですね」
二人が話していると、ケイスがラズの服の裾を軽く引っ張った。
「ん?ああ、そうだったな。我らも計画を練らなければな」
ラズは地図上のしるしの一つを指さして言った。
「私たちはここから責めよう」
「なるほど」
そこは王都から見て一番右側の敵拠点。つまり、ルロナたちは右端から順に左に向かって侵攻していくわけだ。
「後は其の場で考えよう」
ラズはルロナに背を向けて話し続けた。
「明後日出発する。其れ迄に準備しておけ」
勝手に進んでいく話に、ルロナは「分かりました」と返すしか無かった。
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