戦場
ルロナたちが到着したとき、地上にはおびただしい数の魔族と、それを抑えようとする王国の騎士団の姿があった。
すると、ルロナたちの乗った風飛艇に気がついた数体の魔物が空に飛び上がって襲いかかってきた。
「レスさん!できるだけ早く着陸を!」
「わかってます!お二人はどうにか体勢を調節できるだけの余裕と時間を稼いでください!」
「もちろんよ!」
ルロナは短いナイフを投擲し、敵の頭に突き刺す。ファレナは風飛挺に被害が出ないように気を使いながら雷魔法を繰り出す。
「サンダー!」
鋭い光がきらめき、すさまじい轟音が辺り一帯に響き渡る。その威力は、襲撃してきた魔物が炎をまといながら黒焦げで落下し、雷撃のカケラが地上にいる魔物の集団をいくつか焼き払うほどだった。
「このまま行けば着陸できます!」
レスの声を聞いた2人は着陸の衝撃に備えた。
ルロナは王国の騎士団からできる限り身軽な装備を借り、ファレナを連れて戦闘に加わった。
「ファレナさん!」
ルロナの声を聞いたファレナは、最前列に立ち、杖を構えた。
「ええ、任せて。アイス!」
その瞬間、大地のとてつもない範囲が凍りつき、魔物達は身動きをとれなくなった。ファレナはそこに、さらなる魔法を撃ち込んだ。
「グランドブレイク!」
大地が裂け、凍てついて鋭利な土の破片が敵に襲いかかる。
ルロナは敵を始末しながら全速力で突き進み、前線を一気に押し上げる。このまま行けば勝てる。誰もがそう思ったとき、空から巨大な岩が降ってきた。
落下地点にいた者たちは吹き飛ばされ、味方陣営に動揺が走る。空を見あげると、そこには悪魔のような翼を広げた、図体の大きな魔物が数十いた。
奴らは魔法で岩石を生み出し、空中からそれを落としていた。
そしてその岩が、ファレナの頭上へ落下する。
(まずい…!今ここで彼女が死んでしまっては…私の計画が!)
そんな考えが脳裏をよぎり、ルロナは咄嗟にスキル「速度増加」を発動させ、ファレナの元へ向かっていく。しかし、速度を増したものの、ファレナとの距離はかなり空いており、空高くから落とされた岩の落下速度はかなりのもので、間に合いそうになかった。
その時、一本の大きな赤い太刀筋が岩の中を走り抜けた。それはまさしく、魂の宿った一撃。岩は砕け散り、それを背後に攻撃の主は腰を抜かしたファレナへ手を伸ばす。
「よう、また合ったな。思ったよりも早い再開だよ。ファレナ・リゾート」
「ビヤレル!」
「あ、そうか。あんたがいるってことはあいつもいるんだろ?」
そのタイミングでちょうどルロナも2人のもとにたどり着いた。
「ごきげんよう。ビヤレルさん」
「よう。」
すると、天空から魔物の叫び声が聞こえた。そこに目をやると、1人の人間が生身のまま空中を走りながら魔物たちを次々と撃墜していっているのが見えた。空を蹴っているように見え、その場に床や壁があるかのように錯覚させられる。
「あれは…」
「私たちと同じ、特異点冒険者の1人。クレッシェンドだ」
ビヤレルの言葉に、ファレナがすぐさま反応した。
「特異点冒険者クレッシェンド!スキル「スカイウォーカー」の持ち主で、空中を縦横無尽に駆け回り、ばったばったと敵を倒す!くー!かっこいい!」
「はは…。ファレナさんは相変わらず、特異点冒険者の話になると急に元気になりますね」
「えへへ」
と、その時。ルロナたちの背後から爆破音が聞こえた。見ると、筋肉質の人の肉体にイノシシの頭が乗った、奇妙な姿をした超巨大な怪物が数体で群れをなしてこちらに向かってきている。
「なんですかあれは?腹の上に小さな村を作れるぐらい大きいじゃないですか」
「しょうがねぇな。ルロナ、ファレナ!準備はできてるな?」
「はい」「もちろんよ!」
「よし!いくぞ!」
3人の背後で王国の騎士団が他の魔物を相手にしてくれていた。そのおかげで、3人は巨大な怪物たちに専念することができる。
ルロナは考えた。これまでスキルのことを隠していたものの、こんな事態になってしまった以上、最悪の場合は使うしかない。と。
空ではクレッシェンドと、その援護に来た戦闘用の風飛挺が激しい戦いを繰り広げていた。
そして今から地上でも、文字通り大地を揺るがす戦闘が始まろうとしていた。
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