ラクラの依頼
後日、ビヤレルは目的を果たしたので「また会おうぜ、特異点冒険者同士は、いつも互いに引き寄せ合う何かを持ってんだ」と言って、街を去っていった。
そして、ルロナはファレナとともに貧民街に向かった。そこでラクラと合流し、あまり人目につかないような場所で、ラクラからの依頼を聞いた。
「君には、魔族によってつくられた組織の調査をしてもらいたいんだ」
「え?」
ルロナは少し驚いた。そしてラクラはルロナが驚いたことに驚いた。
「どうしたの?」
「いや〜てっきり、貧民街の復興や差別撤廃の演説の手伝いでもさせられるのかと…というか、必要ないのですか?」
「皆、周りに流されてるだけなのよ。なんとなくそんな空気だから従ってる奴らが大半だと思うわよ。一部熱心な差別主義者は居るけどね。だから、その湿りきった空気を変えれれば、意外とあっさり差別は消えると思うわよ」
「そうだね。獣人差別が始まったのはそこまで昔じゃない。むしろ、深く染み付かないうちに掃除しないと。それに協力者なら、すでに他にいるから」
「なるほど、だから私たちには別のことをさせようと?」
「そう。それに、もっと君たちに向いていることがある」
詳しく聞いたところ、街から出て東側の山。その奥深くを拠点にし、怪しい動きをしている魔族の集団がいるとのことだった。
すでに準備を済ませていたルロナとファレナはすぐに、その集団の拠点に最も近い村に向かった。
その村までの距離はそこそこあって、今の時間からだと、到着は少し遅くなってしまいそうだった。早歩きでも大して時間は変わらなさそうだったから
朝方だというのに森のなかは薄暗く、湿った木や苔の匂いが鼻を突く。それに、どこからか獣の唸り声まで聞こえてくる。
道中の森の中で、2人は魔物に襲われながら進んでいった。ルロナが前衛に出て戦い、ファレナが後ろで死に損ないをポコポコ殴っていた。
「私の魔法をポンポン使ったらこの森消滅しちゃうと思うから、あなたが片付けてくれて助かるわ」
「この程度なら楽勝ですよ!」
「頼もしいわね」
しばらくして、魔物の襲撃が落ち着いてきたので、ルロナはファレナに、ずっと疑問に思っていたことを口にした。
「ファレナさんは、どうやってそこまでの魔法の力を手に入れたのですか?」
その問いを聞いて、ファレナの顔が少し引きつった。
「あー…まあ、確かに。そうね…行動を共にするんだから、このぐらいは知っててもらったほうがいいのかもしれないわね…」
ルロナは、あまり触れてはいけない何かに触れてしまったような、そんな感覚に襲われた。
「何か…あったのですか?」
ファレナは少し俯き、どこか遠くを見つめるような目をした。
「何もなかったとは言えないわね…」
小さく息を吸い、覚悟を決めるように続ける。
「話すわ…私のこと」
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