スキル研究所…?

 あれからいくつかの依頼を達成し、ルロナも多くの生き物を殺した。


 そして、もう慣れた手順を踏んで、依頼を受けた。

 今回の目的は突然現れた「異様に強いトラ型モンスター」だ。異様に強いとは、どういうことかと2人が聞いたものの、「どういうことも何も、言葉のとおりですわ。でも、お二人ならきっと大丈夫ですわ!」と独特な口調の受付嬢にきっぱりと言い切られ、仕方なく現地へ向かった。


 以前、山を燃やし尽くした平原へ着いた。どうやらここが、例のトラが最後に目撃された場所のようだ。

 2人はしばらく立ち尽くしていたが、微妙な空気を断ち切り、ルロナが口を開いた。

「とりあえず、罠でも仕掛けましょうか!」

「そうね!」

 そうして、2人が動き出そうとしたとき、大きな生き物の気配を感じた。そちらを向けば、その姿を簡単に拝むことができた。平原で視界を遮るものが少なく、何よりもそのトラのような生き物が10メートル近いサイズを誇っていたからだ。

 ファレナは当然だが驚いて、ルロナの背後に隠れた。

「え?!…何であんなのが…ってもしかして…」

 ルロナもうすうすそんな気はしていた。

「どうやら、あれが今回のターゲットのようですね」

 ファレナは疑問を口にした。

「何で?まだ何も用意してないけど…」

「もしかしたら、ずっと立ち止まっていたので安全な獲物だと思われたのかもしれませんね〜」

「なんでそんな軽いの!?」

 トラ型モンスター、名をランニングタイガー。だが、本来は大きくても2メートル程度のサイズにしかならないはず。あれは明らかにおかしい。

 ランニングタイガーは咆哮し、こちらへ向かってくる。

「え?え?嘘!?」

 混乱して動けないファレナをその場に置いて、ルロナはランニングタイガーに立ち向かう。

 そこでルロナは新調した武器を取り出した。斧、しかし何も特別なものではない。使用者が限られる武器は、人を殺したときに傷跡や破片などから、犯人が特定されてしまうかもしれないため、ルロナはあえて、なんの変哲もない武器を選んだのだ。

 ルロナはランニングタイガーの脚へ攻撃したが、傷が浅い。どれだけ攻撃しようが、決定打に欠ける。

 すると後ろから「跳んで!」というファレナの声が聞こえた。ルロナはその指示に従い。真上へ高く跳躍した。

 すると、「アイス」と唱える声が聞こえ、次の瞬間、大地が凍りだした。緑豊かな平原が一瞬にして氷河の世界へと変貌した。

 どうやらこれも、ファレナの魔法のようだ。

 ランニングタイガーは、脚が凍結に巻き込まれ、身動きが取れなくなった。

 ルロナはそんなランニングタイガーに跳び乗り、その脳天を斧で叩きつけた。何度も叩きつけた。何度も何度も何度も。

 しばらくして、ランニングタイガーは動かなくなった。すると突如、ランニングタイガーはみるみる小さくなっていく。それと同時に、ルロナのことを久しい頭痛が襲った。


―特別個体の殺害を確認。スキル発動。個体の所有スキル、巨大化を獲得―

―巨大化とは、任意で自身のサイズを大きくすることができるスキルです―


 なこの特殊なランニングタイガーはスキルを持っていたようだ。

 ルロナは小さくなった身体から降り、ファレナへ近づく。

 ファレナも安心したような顔をしたが、ルロナの姿を直視した瞬間、顔を背け、口を手で覆った。

 ルロナは心配し、声をかけた。

「大丈夫ですか?」

 ファレナはすぐに答えた。

「ウッ…ごめん…」

 ルロナはすぐにその原因を理解した。今、ルロナの体はランニングタイガーの返り血に染まっており、耐性のないファレナが具合を悪くするのも仕方なかった。

 ルロナはすぐに替えの服に着替えた。

「すみません!もう大丈夫ですよ!」

「本当にごめん」

 ファレナは少し青ざめた顔で謝った。

「もう休みましょうか…」


 ルロナは依頼達成の手続きをして、ファレナを連れて宿へ向かった。

 ファレナは部屋に入ると、疲労からかすぐに布団に潜った。

 ルロナは「服を洗ってきますので、しばらく外します」と伝えて、宿を後にした。

 ファレナは布団の中で呟いた。

「動けないわたしの代わりに戦ってくれたのに、あんな反応しちゃった…。後でもう1回ちゃんと謝ろう」


 宿から2キロ以上離れたところに、一人の男がいた。

「どうやらあの虎にはスキルが発現していたようだな…しかし、その虎を普通の斧で殺してしまうあのルロナと言う男。奴に関する情報を調べなければ」

 そう言って男が立ち上がると、その男に背後から声をかけるものがいた。

「やっぱり見られてましたか〜」

「…!?」

 声をかけたのはルロナであった。

「お前…どうやって…」

「いや~、見られていることには気がついていたのですが…ここまで離れているとは!見つけるのにだいぶ時間がかかってしまいましたよ」

「……」

 男は警戒しながらも、ルロナにとある提案をした。

「俺はナユト。ルロナよ…。スキル研究所に来て、俺達に協力しないか…?」

「スキル研究所…?」

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