冒険者登録の準備

 街の門をくぐり、道なりに進んでいく。

 道中でファレナは、ルロナに冒険者になる方法を説明する。

「冒険者は基本的に、ギルドから依頼を受けることになるんだけど、その依頼を受ける「任務ギルド」とは別に、冒険者登録をする「登録ギルド」があるの」

「なるほど!今はその登録ギルドに向かっているのですね!」

「そうよ」

 ファレナによると、他の冒険者からの推薦があれば、一部の試験をカットできるため、登録自体は難しいものではないとのこと。


 そうこうしていると、2人は登録ギルドにたどり着いた。

 木でできた扉を開くと、屋内は簡素で、机と椅子がポツポツと置いてあり、入り口からまっすぐ入ったところにこれまた簡素な受付がある程度。本当に登録するためだけの施設なのだろう。

 2人が受付まで行くと、なにかの書類を整理している受付嬢がこちらに気づいたようで、こちらに話しかけてきた。

「あ、登録ギルドへようこそ!冒険者登録ですか?」

 受付嬢の問いかけにファレナが答える。

「わたしは冒険者のファレナ。この人を推薦しようと思って来たの」

 受付嬢はすぐに、先ほど整理していた書類と同じ髪を差し出し、ルロナに対して言った。

「こちらの書類に必要な情報を記入してください」

 書類に向きあったルロナはとあることに気が付いた。見たことのない文字であるにもかかわらず、理解できる。というか、別の世界の人と会話ができている時点で気づくべきだった。

 女神はルロナに対して、何を教えて良いのか、何を伝えるべきなのかを悩むあまり、言語に関する説明を忘れてしまったようなのだ。

(きっと、女神が私に伝え忘れたのでしょう……どうしてその程度のことを教えてくれなかったんですかね…?)

 ルロナは若干の不満を覚えたが、今となってはどうだっていいことだ。

「ルロナ?どうしたの?」

 考え事をして、手が止まったルロナを気にして、ファレナが声をかけた。ルロナは急に声をかけられ、一瞬驚いたが、すぐに冷静に対応した。

「あ、いや〜。一旦この紙に書いてあることをすべて読んでから記入しようと思って」

「なんだ。急に黙ったからびっくりしちゃった」


 記入完了後、ルロナは書類を受付嬢に渡した。受付嬢は確認のため、ルロナの情報を読み上げる。

「えっと、ルロナ・デビラズ。男性で22歳。ご出身が書かれていませんが…」

「ああ…。すみません。名前もない辺境から来たもので…」

「いえ!そういう方もそこそこいらっしゃいますので大丈夫ですよ!」

 名もなき辺境がルロナの出身地であるのは事実だ。彼は死ぬ前から、ふざけた環境で生きてきた。


 すべてを確認した受付嬢は書類をしまい。ルロナに説明を開始した。

「それでは、戦闘力を測らせていただきます。相手は人型の戦闘人形です。一対一と、一対三での戦闘を両方していただきます」

 受付嬢の言葉に、ファレナが反応した。

「ちょっと待って!冒険者からの推薦なら、その試験はカットされるはずじゃない?」

 それに対し、受付嬢は申し訳なさそうに答えた。

「すみません、ファレナ様は実績が足りて居ないため、推薦によるカットができません」

「そうなの…?」

 実績が足りていないと言われたからか、ファレナは少し落ち込んでしまった。

 しかし、ルロナはその「実績が足りない」という言葉に違和感を覚えた。

 彼は殺し方を決める手段の一つとして、相手をみるだけで、だいたいの力を感じ取る能力を独自に手に入れていた。ルロナは、ファレナから異常なまでのエネルギーを感じていた。ルロナでさえ警戒を緩められないほどの力を。本人がそれに気づけていないケースは珍しい。

「大丈夫ですよ。ファレナさん。それに、戦闘人形と戦ってみたいとも思いましたしね」

 ルロナはファレナに向かってそう言った。その言葉を聞いた受付嬢は「すぐに準備しますので、ご用意を!」と言って外の戦闘場に向かった。

 ルロナもその後を追った。

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