第25話:冒険者ギルド
「起きて下さい・・・」
誰かが俺を呼んでいる。
「起きて下さい・・・」
これは体験した事がある。
死んで女神に呼ばれた時だ。
そうだ、俺はまた死んだのだ。
という事は3度目の人生を与えられるのか・・・それとも今度こそ天国に行くのだろうか?
俺は恐れながらおずおずと目を開けた。
(ん・・・誰だ?)
思っていた女神の姿ではなく、丸眼鏡をかけた黒髪の女性が俺を覗き込んでいた。
まさか別の女神なのだろうか?
「あ・・・女神様ですか?」
「え?」
「俺はまた死んだけど、次はどうなるんだ?」
「え・・・え?」
彼女は問いに答えず、ただただ困惑している。
何か様子がおかしい。
「あの・・・よくわかりませんが・・・死んでませんよ?」
「死んでない?」
俺は驚いて周囲を見回すと、ベッドが何個か並んでいる部屋だった。
部屋の造りや家具がなんとなく西洋ヨーロッパっぽい造りで、見覚えがある世界観。
どうも、まだ転生してきた世界のようだ。
(まだ死んでなかったのか?いや・・・よく考えるとHPが無くなると死ぬけど、MPが無くなって死ぬゲームってあまり聞いた事がないよな。ただ、意識は失う設定なのか・・・。)
「だ・・・大丈夫ですか?」
「あ・・・ああ、大丈夫だ。え~と君は?」
「え、あ・・・私はアンヌです。」
「アンヌさん、ここはどこだろうか?」
「あ、その・・・ここは迷宮都市リンガの冒険者ギルドです。」
「迷宮都市リンガ?冒険者ギルド?」
迷宮都市リンガ・・・初めて聞く名前である。
この世界に来てエルミ村しか知らない俺が他の都市など知る由もない。
ただ冒険者ギルドには聞き覚えがある。
ゲームとかでは、冒険者の登録や仕事の斡旋などしている組織である。
確かにターレスやシデンなどの冒険者がいる以上存在していてもおかしくはない。
「その・・・なんで俺はこんなところにいるのかな?」
「え・・はい、冒険者のシデンさんがグッタリしていた、あなたを連れてきたんです。」
やはりシデンがここに連れてきたようだ。
「それで俺をどうするつもりだ?」
「えっ・・・え?どうするも何も・・・私は様子を見ていてとしか・・・。」
彼女はあまり事情に詳しくなさそうだ。
それに白いブラウスに黒いタイトスカート姿で一昔前の事務員のようで、冒険者には見えない。
(俺に敵意もなさそうだし、監視しているって感じでもないな。召喚士だって事はバレてないのかも。)
その時、部屋の扉を開けて聞き覚えのある声を共に誰かが入ってきた。
「お・・・気が付いたな。」
そのままズカズカと俺の前に来て近くの椅子に座った。
「俺の事を覚えているか?シデンだ。」
「え・・はい。あの・・なぜ俺はこんなところに?」
「いきなり倒れて、目を覚まさないから僧侶たちがいる迷宮都市に連れてきた。」
「あの森から迷宮都市・・・俺は結構寝てたんですか?」
「そうだな、あれから次の日の夕方・・・つまり今まで眠っていたからだいたい丸一日ぐらいか。」
「丸一日・・・という事はここはあの森から近い場所なんですか?」
「近くはないな。村にある転移装置でここまで連れてきた。」
(転移装置?文化レベルが高くは見えなかったが、そんな物が存在しているとは・・・。)
驚きはあったが、この世界では前の世界では理解出来ない魔術なども存在しているので、それが不可能を可能にしているのかもしれない。
「それより腹が減っているだろう。奢るから食べに行こう。」
そういえば丸一日寝てたのなら、腹は減っているはずだ。
認識し始めると空腹感が襲ってきた。
(腹が減っては戦は出来ないか・・・。)
彼の意図が何であろうとも、どちらにせよ逃げる事は出来ないだろう。
「わかりました。お願いします。」
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