第5話:最初の召喚
「よし!やるか!」
俺は深呼吸して【はい】を押した。
すると床の召喚陣が光り出した。
(ここから出てくるのか?)
俺は期待して、召喚獣の出現を待つ。
・・・。
・・・・・。
何も起こらない。
(どうゆう事だ?何か起こるんじゃないのか?)
意味が分からずウィンドウを見ると、
【後、召喚を9回する事が可能です。】
と出てきて、また【はい】か【いいえ】の選択肢が出た。
(え・・・さっきのは召喚失敗なのか?おいおい、少なくともゲームだったらハズレでも何か手に入るぞ。)
どうもハズレだと、召喚獣自体手に入らないらしい。
(まさか、SSR召喚獣の確率が運の半分ではなく、召喚獣が手に入る確率だったりするのか?・・・それだと恐ろしい事になる。)
その場合、召喚士は完全にハズレ職業だ。
職業選びを失敗してしまったかもしれない。
(いや・・・大丈夫だ。後9回もある。)
俺は念を込めて【はい】を押す。
また、床の召喚陣が光り出した。
(とにかく何か来てくれ!)
俺の願いが届いたのか、何かが浮かび上がってきて形を成していく。
人の身長ぐらいある長細い物体!
(おおおお・・・・これは!)
「やり?」
間抜けな声がでてしまったが、細長い物体でその姿はおそらく槍(やり)である。
よく見て、触って持ち上げてみると、しっかりと感触があり銀色で美しいその姿は美しく、非常に強そうである。
(もしかして武器型の召喚獣?)
しかし、色々触っても振り回してみても、ウンともスンとも言わない・・・やはりただの槍である。
どうもこのガチャ・・・召喚獣以外に武器も出てくる【闇鍋ガチャ】のようである。
(マジか・・・何も出てこないハズレもある上に武器も出てくるなんて、召喚獣の確率がもっと下がるじゃないか・・・召喚獣がいない場合、出てきた武器で戦えっていうのか?)
とりあえず、槍を鑑定してみる。
レア度:SSR
女神の槍:女神の祝福を受けた槍。使用者の能力によって威力が増し、どんな事があっても破壊される事はない。
レア度がSSRで凄そうだが、使用者の能力によって威力が変化するという事は、弱い俺では威力が出ないという事である。
(最終的には強そうな武器だが、単純に誰が使っても強い武器とかが良かったなあ。それなら雑魚狩りでレベル上げ出来るかもしれないし。)
とはいえ、これで素手で戦わなくてもいいから少しはマシなのかもしれない。
とにかく次だ。
俺は念をまた込めて【はい】を押す。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
【後、召喚を1回する事が可能です。】
(なんてこった!もういつの間にかあと一回になってしまった!)
信じられない程、何も盛り上がらずあと一回で10連が終わろうとしている。
これがガチャの恐ろしさである。
結局最後の1回まで、防具セットしかでなかった。
しかも同じ女神シリーズの鎧、小手、具足、兜の4点セットである。
それ以外は全てハズレである。
ある意味同じシリーズで被ってもないので幸運なのかもしれない。
(というか女神シリーズって本当にレア度:SSRなのか?簡単に手に入りすぎだろう。この鑑定の腕輪壊れてるんじゃないだろうな・・・。)
俺は鑑定の腕輪に何か不具合がないか、取り外して調べようとして動かそうとするがビクともしない。
手首をいくら動かしてもピッタリ吸い付いて、まるで体の一部のようだ。
(なんだこれ・・・あの女神め。呪いの腕輪でも渡されたのか?)
不気味だが、外せない以上これ以上考えていても仕方ない。
それより最後のガチャをしなければならない。
これを外すと何も知らない世界で、何もないまま生きていかなければいけない。
まさに人生クソゲーである。
(大丈夫だ・・・土壇場では俺の運気は上がるはずだ。)
賭け事で根拠のない自信で人生終了する、負け組と同じような思考で【はい】に指を近づける。
汗が出て、体が震える。
(頼む、たのむ、タノム・・・。)
神に祈る気持ちで【はい】を押した途端、今までと同じように召喚陣が光り出す。
しかし、そこからが今までとは違った。
部屋全体に電撃がはしり、何か巨大なものが召喚陣から少しづつ出現する。
(な・・・なんだ!)
その巨体は部屋の天井近くまで届き、俺を見下ろす。
それは全身強固な鎧に身を包み、巨大なハンマーを携えた戦士だった。
兜の隙間から光る眼が俺を捉える。
体中に電撃をまとい凄まじい威圧感を放ち、一緒の空間にいるだけで俺は消し飛びそうな錯覚を覚えた。
(これは・・・間違いなくSSRの召喚獣だ!ついに引き当てた!)
俺は恐怖と共に歓喜に震えた。
『貴様が俺を呼びだしたのか?』
静かだが恐ろしい声に勝手に俺の体は震えだす。
「そ、そそそそ・・・そうだ。」
『なるほど・・・我が名はト・・・ウッ・・・ガアアアアアアア!』
すると召喚獣は頭を抱えて苦しみだした。
「な・・なんだ!どうしたんだ!」
彼は苦しみながら召喚陣へと戻っていく。
「おい、戻るな!帰ってこい!」
そしてやがて吸い込まれるように消えてしまった。
「まさか、これはキャンセル演出?昇格演出ならともかく、降格はなしだろう・・・。」
しかし、また何者かが召喚陣からせりあがって来た。
「なに?!まさか・・・本当は昇格演出か!」
先ほどのように少しづつ体が出てきて、俺はそれを期待を込めた眼差しで全身が現れるまで見届けた。
先ほどの者のように巨体ではない。
赤く燃えるような髪、そして凛々しく美しい顔。
細くて鍛えられた肉体にピッタリとした赤いタイツが全身を覆っている。
『貴方が私を呼び出したのか?』
「は・・・はい!」
『私はヒルダ。今後ともよろしく。』
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