【犯人なのに】双神は馬房で待機中

(鷲らしく……見せないと……)



広げた翼をそのままに、羽根の手入れをして見せた。



「チャンスだぞみんな!」



頷いた男達が何かを取り出し、それを鷲に向けた。



(は……?)



それを見て茫然とするガルダ。

カシャカシャと聞こえる機械音。



「こんな所にオウギワシがいるなんて……凄くラッキーじゃないか!」



「まだ逃げないでくれよ!その雄姿を残させてくれ!」



キャッキャとはしゃぐ男達。

彼らが手にしているのはカメラだった。


レースを中止させようと参加者を襲っていたはずなのに。

さっきの事故も彼らの仕業のはずなのに。


妨害の事を真剣に話し合っていたはずなのに、鷲を見つけた途端にはしゃぎ出した。


あまりの変化に訳が分からなくなってしまう。



(と、とりあえずディアに報告しなきゃ、)



「あーーっ」



飛び去ったガルダを見て落胆する男達。

名残惜しいのか、ずっと鷲を目で追っていた。



「あっ、降りた!」



「ま、まさか……狩りか!?」



歓喜の声を上げ、ダッシュする6人。



「確かこっちに……うおっ!」



鷲の発見と同時に女性と目が合い、その美しさに驚きの声を上げてしまった。



ディアの肩に止まるオウギワシ。

早く報告しようと、姿を変えずに降りたのだ。



「野生じゃなかったのか……。」



「けど!オウギワシはオウギワシだ!」



「そのまま写真を撮らせて貰っても!?」



眉間にシワが寄るディア。

ガルダの報告では彼らが妨害の犯人なのだが……。



「貴方達……何なの……?」



犯罪者がカメラを持って興奮している。

何がしたいのか分からず疑問をぶつけた。



「何って……動物愛好会のサークル仲間?」



「可愛いもんな、動物って。」



「オウギワシも格好いいよな。」



「だから写真撮らせて!」



プリーズと声を揃える6人。

その中の一人がハッとする。



「君、同じ大学の人じゃないか?」



「え、そうなのか?だったらそのよしみで撮影の許可を!」



「へえ~、同じ大学にこんな美人がいたとは知らなかった。」



彼らの興味は同世代の女性よりも動物にあったようだ。

ディアの存在を認識し、その美しさを賛美していたが……



「オウギワシと美女!良い絵になるぞ!」



やはり動物が中心らしい。


そんな6人の会話を、ディアは唖然としたまま聞いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る