レースの事前調査

【双神と潜入捜査】

「ではコースへ御案内しま~す。皆さん馬車に乗って下さ~い。」



用意された観光馬車へと誘導される。

参加者は30名。

3台の馬車に10名ずつ乗り込み出発した。



「ディアちゃん、後ろじゃなくて良かったのかい?」



「うん。無理言って乗せて貰ってるし、後ろは男所帯だから遠慮したいの。」



御者の隣に腰を掛け、コースの下見に同行したコンパニオンのディア。

空を見上げれば鷲が旋回しながら飛んでいる。



「男所帯ね……。俺の隣は平気なのかな?」



「多分平気。おじいちゃんこそ大丈夫?若い女の子の隣で血圧上がったりしない?」



ニッと笑って揶揄からかうディア。



「上がらんよ。ディアちゃんは孫みたいなもんだからな。」



ニッと笑い返すおじいちゃん。

白髪頭に乗せたテンガロンハットが良く似合っている。

そんな老人だから、ガルダが嫉妬する事はないのである。



「ねえ、おじいちゃん。今回の参加者って多い方なの?」



「いや~、少ない方だな。いつもは50台とかなんだが……」



参加者が負傷したり、参加を取りやめたりしているのだと言う。

減りすぎた為、開催日を延ばして新たな参加者を募ったらしい。



「少なくて30台か……。タイムレースだから一台ずつ走るのよね?」



「ああ、一台ずつでも迫力あるぞ~。御者の腕の見せどころだしな。」



「もしかしておじいちゃんも参加した事ある?」



「若い頃にな。血気盛んな奴らも多くてなぁ……馬をダメにする奴らも多かったよ……。」



そう言った御者は少し遠い目をしていた。



「馬をダメにする──か。」



つぶやき、馬車を引く馬を眺める。

大きな馬車を引くだけあって、立派な体つきをしていた。



「きゃあっ!」



「うおっ!」



御者とディアが声を上げた。

ガタンと揺れた馬車が傾いたのだ。



「何!?どうしたの!?」



「分からんが……みんな怪我はないか!?」



「ああ!ちょっとぶつけた程度だ!」



参加者に大きな怪我はなく、大事には至らなかった。

ひとまず馬車から降り、原因を探る。



「車輪が外れてる……。何で外れたの?」



「分からん……。出発前の点検じゃ異常は無かったんだが……。」



そこへ後続の馬車がやって来た。

騒ぎを見て止まった馬車から参加者達が降りて来る。


それぞれ別の馬車に乗っていたアシュヴィン双神も合流した。

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