練習のついでに

【双神とお出掛け】

「えっ、アシュヴィン双神が来てるの!?」



宴会でもないのにと驚くセフィーナ。



「ちょっと捜査の協力をね。終わるまで下界で暮らしてもらうんです。」



「じゃあ特徴を見きわめる!パパ、どっちがどっちか教えて!」



その条件は流れたのだが、セフィーナは知らないままだった。

今はそう思っていた方が都合が良い為、あえて知らせる事もしていない。



「今なら区別しやすいですよ。黒馬と一緒に居るのがダスラさんで、白馬と一緒に居るのがナーサティヤさんです。」



「馬!?馬と一緒なの!?」



「ええ。馬車マラソンに出場してもらうので」



話の途中で外へと駆け出すセフィーナ。

シャスタが笑って見送っていた。



「アシュヴィン双神!」



駆けて来たセフィーナを笑顔で迎える二人。



「こんにちは、セフィーナちゃん。薬の勉強の方はどうですか?」



「えっと、今は薬草の勉強をしています。というか、野草の勉強?」



食べられる物・食べられない物。

薬になる物・毒になる物。


彼女はそれを、人間界の知識として身につけようとしていた。



「良い心掛けですね。必ず役に立ちますよ。」



誉められエヘヘと笑う。



「そうだ、一緒に出掛けますか?」



「どこにですか?」



「郊外の森林へ。馬車を走らせるついでに野草の事を教えましょう。」



願ってもない申し出に大きく頷いた。



「ではどうぞ。馬車へお乗り下さい。」



「えっと……」



どちらに乗ろうか迷うセフィーナ。



「セフィーナ!神様の邪魔しちゃダメよ!」



振り向くと手招きするマリアがいた。



「邪魔してないよ!野草の勉強に行くの!マリアも行く!?」



誘ってから、ハッとしてアシュヴィンの顔を見た。



「ええ、構いませんよ。」



微笑まれ、笑顔を返す。



「セフィーナ、野草の勉強って?」



駆けて来たマリアに尋ねられ、経緯を話した。



「マリアもお医者様になるんでしょ?一緒に勉強しよ?」



「ん……そうね。アシュヴィン双神、私もご一緒して宜しいですか?」



「勿論ですよ。さあ、どうぞ。」



そのまま馬車へと乗せられて。

パカパカと車道を──



「きゃあっ、浮いてますわ!」



車道ではなく空に向かって駆け行く天馬。


注目を浴びているだろうと、不安そうに下を覗き込んだセフィーナとマリアだが……


通り行く人々は誰も馬車の存在に気づいていなかった。

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