義兄弟の契り 三国の絆

坂倉蘭

仮想 三国志

 208年、赤壁の戦いを目前に控えた長江のほとりにて。


 劉備、曹操、孫権の三者は戦の前哨として一堂に会していた。


 だが、この夜に誰も予想しなかった出来事が起こる。


 酒宴の席で、劉備の誠実な言葉と関羽や張飛の熱い義侠心が曹操の覇気と孫権の若々しい情熱を動かした。


 酔いの勢いと互いへの奇妙な共感から、三人は義兄弟の契りを交わすことを決意する。


「我々は敵として矛を交える前に、兄弟として心を一つにせん!」


 劉備が盃を掲げると、曹操は笑みを浮かべ孫権は目を輝かせた。


 だが、誰が長兄となるかで一悶着が起きた。



 劉備(字:玄徳 41歳)は、自らの皇室の血筋と仁徳を理由に長兄を主張した。


「漢室を再興せんとする我が志を諸君も知るところ。兄として皆を導く責務がある。」


 その穏やかな語り口に、関羽が頷き、張飛が大声で賛同する。


 対する曹操(字:孟徳 53歳)は、年齢と実績を盾に反論した。


「余は魏王として天下を治める器。年長かつ経験豊富なこの曹操が長兄に相応しい!」


 その威圧感に、荀彧や程昱が静かに同意を示す。


 孫権(字:仲謀 26歳)は若さゆえに一歩引くも、負けじと口を開く。


「呉の未来を担うは我だ。長兄たる資格は志の高さにある。年など関係ない!」


 周瑜や魯粛が苦笑いしつつ、若主の勢いを支える。


 結局、三人の議論は夜通し続き盃を重ねるうちに「年齢順」との妥協案で決着。


 曹操が長兄、劉備が次兄、孫権が末弟となった。


 関羽は「義に順番はない」と不満げだったが、劉備に宥められた。



 義兄弟の契りは、三国の運命を一変させた。


 赤壁の戦いは回避され代わりに三者は、「天下三分の盟約」を結ぶ。


 曹操は北方を劉備は蜀を、孫権は呉を治め互いに干渉せず協力して外敵(異民族や反乱勢力)に立ち向かうというものだ。


 曹操の変化、長兄としての責任感から曹操は従来の苛烈な覇道を抑え、劉備の仁徳や孫権の柔軟さに学ぶ姿勢を見せる。


 荀彧の進言もあり、魏は民のための統治を強化し、苛政が減り北方の民心は安定した。


 劉備の飛躍、曹操の軍事力と孫権の水軍を背景に蜀の基盤を急速に固める。


 諸葛亮の策は、戦よりも内政や外交に活かされ蜀は民の楽園として名を馳せる。


 関羽と張飛は義兄弟の絆を信じ、呉や魏との交流にも積極的になる。


 孫権の成長、末弟の立場ながら孫権は周瑜や陸遜の知恵を借りつつ、呉の経済力と水軍を強化。


 長兄や次兄への敬意を保ちつつ、若さゆえの革新を推し進め呉は商業と文化の中心地として繁栄する。



 義兄弟の契りにより、三国志の「争乱の時代」は終焉を迎えた。 


 魏・蜀・呉は競い合いながらも協調し、異民族の侵攻(烏桓や南蛮など)を共同で撃退。


 民の苦しみが減り、戦乱の記憶は次第に薄れていった。


 しかし、完全な平和は訪れなかった。


 三者の性格の違いから、細かな軋轢は絶えない。


 曹操は時折だが劉備の事を「偽善」と言い、孫権は曹操の「傲慢」と批判。


 劉備は二人の間を取り持ちつつも、自身の理想を押し通そうとする。


 諸葛亮は「この絆は脆い」と警告し、関羽は「義を裏切る者があれば、この青龍偃月刀が許さぬ」と睨みを利かせる。


 ある夜、劉備は夢を見る。


 桃園で関羽と張飛と誓った義が、曹操と孫権の姿に重なる。


「我々が天下を分かち、共に民を救う日が来るのか」と呟く劉備に、諸葛亮は静かに答える。


「主公、義は剣よりも鋭く、絆は矛よりも強い。されど、人心は変わりゆくもの。兄弟の誓いは、試練の始まりに過ぎません」



 十年後、三国は未曾有の繁栄を迎えていた。


 曹操は老いてなお健在で、劉備は蜀の民に慕われ孫権は呉を東方の要とした。


 だが、遠く北方では鮮卑の新たな指導者が台頭し南方では南蛮の反乱が燻る。


 三兄弟は再び盃を交わし、試練に立ち向かうことを誓う。


「我らが義は、天下を一つにするためのものだ」劉備の言葉に曹操は笑い、孫権は頷く。


 だが、それぞれの胸中には異なる「天下」の姿があった。


 三国志は戦乱の物語ではなく、義と絆の物語として新たな歴史を刻み始めた。


 だがその絆が永遠に続くのか、それとも新たな火種を生むのか。


 それは、後の世に委ねられた。


 そしてこの春、新たな戦いがスマートフォンゲームで開幕するのであった!

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