第12話 勝ち目など初めから
☆☆☆
「.....」
「もー、ごめんって。いい加減機嫌直してよ。いつまで拗ねてるのさぁ。」
「拗ねてなんかねぇっす。ふんだ。」
「思いっきり拗ねてるじゃん。」
咲月先輩と実先輩の仕打ちを食らった俺は、少し早歩きで学校へと向かっていた。これ以上貶められてたまるか。
「ほら、もうすぐ学校ですよ。サクサク歩く!キビキビ歩く!」
「ちょ待て待て、先輩を置いていくは何事だい」
「渉くん待ってよ~!」
俺は2人を無視して、学校の玄関へと歩いていく。拗ねてなんかないよ、うん。
来たら説教してやろうと、そそくさと部室の鍵を借りて部屋をあける。が、
「やあ、遅かったじゃないか」
「あれ?どっかで入違っちゃったかな?」
「アイエエエ!?」
なぜか、咲月先輩と実先輩が先に教室にいた。なぜだ、カギは確かに閉まっていたのに!?
「よく覚えておきたまえ。入口は1つとは限らない、ということを。」
「あのね、僕ら窓から入ったんだよ。こんなこともあろうかと、昨日窓のカギを1つ開けておいたんだよね。」
俺はその場でガックシとうなだれる。くそう、出し抜いてやろうと思ったのに......!!
「結局負けかよ、チクショウめ!」
「伊達に1年長く生きちゃいないってこと。先輩に勝とうなんざ、100年早いわ。」
「負けちゃったねえ、くやしいねえ?」
腰に手を当ててドヤ顔をかます咲月先輩と、幼稚言葉を言いながら頭をなでてくる実先輩。次は負けない!と心の中で高らかに宣言する俺なのだった。
☆☆☆
「で、今日の朝練?はなにするんですか。」
「特に決めてないけど......そうだなあ。よし、これの鑑賞会でもするか。」
そういって、咲月先輩はおもむろにカバンから何かを取り出す。辞書以上の厚みだが、どうやら本ではなさそうだ。
「何ですかそれ。」
「写真集、というかアルバムかな。」
「あ、いいねそれ!僕も見たかったんだ~!」
今の今までずっと俺の頭をなでていた実先輩も手を止め、興味を示す。
「実先輩も気になるんすね。何のアルバムですか?」
「お義母さんに借りた君のアルバム」
「ちょっと待ておい」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。俺のアルバムだと!?というか、文字をなんかおかしかったような気がするぞ!!
「メタい話はそこまでだ。朝は赤ちゃん編から幼稚園上がる前までかな。」
「させるかよ返せ!」
「はいはい、おとなしく皆で見ましょうね~」
「ぐほお!?ぢょ、ぎづいっすそれ......!」
取ろうと体を起こしたところを、ベッドロックで止められる。抜けようにも、力が強すぎて抜けられない。実先輩、弱そうな体つきしてるのに、なんて力だ......!
「きついの嫌?ならおとなしくしてようね。」
そういって、今度は優しく頭をなでてくる。
「暴れたら、これだから。」
「......うっす」
違った、暴行予告だ。片手で頭を鷲掴みにされた。これ、逆らったら頭勝ち割れるやつだ。
俺は羞恥心と恐怖に耐える訓練をする必要があると、この時悟るのだった。
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