第2話 選ばれた理由

☆☆☆

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!一体なんなんですか急に!?俺はここに入るなんて言ってませんよ!!」


椅子をがたがたと揺らしながら、そう抗議する。こんな訳の分からない部活に閉じ込められてたまるか!


すると、男の先輩のほうが床に座り、俺の目をじっと見てきた。思わず目を逸らす。


「.....だめ、かな。」


上目遣いで、涙目でそう訴えてくる。それは反則だろ!ルール違反だろ!くそっ、惑わされるな、こいつは男、男なんだ.....!


「.....そ、そもそも!なんでこんな誘拐みたいな勧誘してんすか!普通に声掛けすりゃいいでしょ!?」


「ふふ、甘いね、新入り。そんな方法じゃあ、うちの部活には入ってくれないよ。」


「僕らの学校、部活動が盛んでしょ?どこでも声掛けしてるから、同じことしても埋もれちゃうんだよ。」


そう言われて、確かにそうかと思っ.....ちゃだめだ!危ねぇ!


「いやいや、だとしてもやり方ってあるでしょう!?てか新入り言うな!入らんっての!」


「.....うーん、だめか。これ以上の強硬手段、なにがあるかな。」


「やめてね!?」


俺はつっこみ疲れ、項垂れる。


「別に俺である必要は無いでしょう?他の人にもこれ試して、入るって人がいたらそれでいいじゃないですか。その間に通報されても知りませんけどね。」


俺がそういうと、キョトンとした顔になる。2人は顔を見合せ、首を横に振った。


「君、勘違いしてる。私たちは誰にでもこんな方法は取らないし、君以外を勧誘するつもりもない。」


「へっ?部活動存続の危機だから、目のついた人を勧誘してるんじゃ?」


「まさか。もしそうなら、こんな事せずに普通に声をかけるよ。」


「お2人とも、おかしな事してるって自覚はあったんすね.....」


入って欲しいなら尚更やるなよ、と言いたいところだが、そこはグッと抑えた。話が長くなりすぎるからね。


「なんで俺なんです?お2人とは面識ないはずですけど。」


そういうと、2人はある写真を俺に見せてきた。それをじっと見つめ、あることに気づいた俺は驚愕した。


2人が見せてきた写真は、某小説投稿サイトのスクリーンショットだった。そしてそこには、少し前に俺のアカウントである作品につけた感想コメントが写っていた。


「.....この感想コメント、君だよね。これね、私たちが書いた小説なの。」


「最初は全然読まれなかったんだけどね。君が感想コメントを残して、さらにSNSに載せてくれたおかげで、だいぶ読んでくれる人が増えたんだ。」


2人の言う通り、俺は感想コメントを送ったし、それをSNSに載せたのも事実だ。そこそこフォロワーがいたために、閲覧数が伸びたのが嬉しかった記憶がある。


だが、問題はそこじゃなかった。


「な、なんでそのアカウントが俺だって知ってるんですか!?俺、SNSに一回も写真載せてないですけど!?」


何故その情報から、俺個人を特定できたのか。それが恐ろしかったのだ。


「私たちにかかれば、この程度の特定はお手の物。」


「調べ方って色々あるんだよ。SNSに位置情報載せてるし、複数のSNSアカウントから文章の癖とかみてある程度絞り込んだりしてね。」


「位置情報って.....日本までしか載せてないはずですけど?いやマジで、なんで特定出来たんですか。」


そういうと、2人して目を逸らした。あ、これあんま良くない方法を使いやがったな。まさか逆探知、あるいはハッキングか.....?


「私たちは君に感謝してる。だから、うちの部活に入ってもらいたい。」


この人、あげく俺の話を無視しやがったぞ。


「そうだ、新部員としてこれを書いてもらわないと。」


男性の先輩が、そういって1枚の紙を差し出す。そこには、「入部届」と書かれていた。


「いや書きません、書くわけないでしょ。」


「.....なんで?」


「いや、個人情報特定してくるような人達と同じ部活とか、嫌ですし。これ解いてくださいよ。」


そういうと、2人は何故かマジな目になった。.....なんか、イヤな予感しかしない。


☆☆☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る