夢と現実の渚を描く物語
- ★★★ Excellent!!!
2-3まで拝読いたしました。
本作は、自信を持っていま最もおすすめしたい創作作品の一つです。
様々な魅力がある作品ですが、とくに詩的な表現の数々が美しく、かつそのどれもが主人公の心情に深く結びついており、全く冗長さを感じさせません。
物語は、少女の夢の中「幽霊散歩実験」から始まります。そして、そのファンタジーな体験から目が覚めると、彼女のどんよりとした日常が対照的に描かれます。
母を失った喪失感、父との微妙な距離感、学校でのポジションなど、その描写のどれもが、主人公の孤独や世界に対するリアルで複雑な感情を巧みに表現しており、人物に非常に深く没入することができます。
また、第2話は主人公の名前がタイトルとなっており、そしてその冒頭が「百年後のあなたへ」の一節から始まっている。
このことから、この本の内容が彼女の内面に強く影響しているのでは?また、「青空読者時間」でもこういった雰囲気の本を読んでいるのでは?などと想像させられます。
第一夜を読み終えた時点でも、人物の視点を変えたり、文章そのものを味わうために、思わずもう一度読み直してしまう、そんな余韻があります。
これは間違いなく緻密に構成・描写された名作に共通する要素です。
力を手に入れた主人公が今後どのように世界と向き合い、また、彼女の心はどのように変化していくのか、見守っていきたいと思います。