アポカリプス

Ark M. Veritas

第1歯 ユリゼンの断罪人

ドォォオオン!ドォォオオン!

今日も いつものように 轟音が鳴り響く...


「怯むなー!進め進め!」

隊長クラスであろう兵士が他の隊員を

鼓舞するかのような叫び声が聞こえる...


「はぁ...まったく、

いつになったら 終わるんだか。他の奴らは

ほんと、ノロマだな...」

憂鬱そうなため息を つきながら 1人の青年は

戦場を駆け巡る。


「あっ、少尉! ダメですよ !独断専行

しちゃうのは!」

彼の部下であろう 可憐な少女が

後を追いながら 注意を促す。


「この世の道理はなんだ?

勝てば官軍、負ければ賊軍だろう。

だったら、さっさと 敵を蹴散らして倒す方が

後々 楽だろうがよ!」

だが、素知らぬ振りをして詭弁を返しながら

男は 敵に狙いを定めて

2つの愛銃で撃ち続ける。

敵を倒すために、そして この戦を

楽しむために。


この男の名前は

アルゴノート・ランドルフ。

弱冠18歳ながらに 少尉であり、

要塞都市帝国ユリゼンの

新鋭部隊 イーグルビークの小隊長である。



「よし!これで 敵は20人連続で 倒したぞ!

ほら、俺が言った通りだろ? サマーシャス

軍曹。 とにかく敵を倒せばいい話なんだよ。」 「それにさ、戦場ってのは結局、生き残った奴が正義なんだ。スコアを刻む俺の銃弾が、

どんな規則より雄弁に語るってな!」

少しからかうかのように 先ほど 注意してきた 部下もとい 相棒である軍曹に

煽り文句を投げた


「それは そうかもしれませんけど!

あとで 営倉行きやら報告書の作成なんかは、

結局 アタシの役割になるんですからね!?

あまり 無茶しないでくださいよ!」

少し涙目になりながら 軍曹は彼に懇願した。

しかし...



「さて、今回は どれくらいスコアを更新できるか楽しみだな〜」

当然のごとく 軍曹の話を最後まで

聞くことなく しかし 気まぐれに他隊員を

フォローすることを忘れずに

戦場をひたすら遊戯するのであった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シングラー戦線での戦況は

どうなっている?」

中世ヨーロッパを彷彿とさせる

ゴシックな建物にパイプや歯車を

巡らせたような アンティークな宮廷で

威厳深い男が 頭を垂れている者に尋ねた


「はい、今回の戦でも 件の断罪人が

また 独断専行しているみたいですが...

相も変わらず 実に腹立たしいですが

戦果を挙げているみたいです。

ルアーブ帝王様。」

帝王と呼ばれた男は 嬉しそうに笑みを浮かべ

報告をしてきた男を宥める。


「そうかそうか。

まぁ、そう辛辣に扱ってやるな。彼奴は...

アルゴは 暴れ馬な気質はあるが

優秀なところはあるからな。少しくらいは

大目に見てやれ。とはいえ、きちんと報告書などは提出するよう厳命しておけよ?

ライレブ大佐。」

大佐である男は 少し帝王に呆れを

感じながらも 後でアルゴノートに説教を降すことを決意しながら

謁見と報告を終えるのであった...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日も 任務完了!いやー、今回もなかなか

楽しかったな〜。骨のあるやつは残念ながらいなかったけどな!」

前回の目標を更新したからか機嫌よく

鼻歌を唄いながら 拠点にある宿舎へ

アルゴノートは帰っていた。


すると 部屋の中には

大量の書類が積まれていた


「命令違反や職務怠慢など

様々な違反を少尉が やらかしたことで

報告書などの書類を 山ほど書く羽目に

なったんで 手伝ってください!」

少し 拗ねた顔をしながら 軍曹が睨んできた

どうやら 今回は さすがにやりすぎたらしい。

正確にいえば 【今回も】ではあるが。


「はぁ...わかったぜ。さすがに この量を

1人でやるのは 無理があるだろうからな。

あっ、あと この部屋は 俺と共同寝室だから

前みたいに 兄ちゃんと呼んでくれても

構わないんだぞ?」


実を言うと 軍曹と彼は 血の繋がった兄妹で

兄の後を追って軍曹は 軍隊へ所属したのだ。

とはいえ、軍曹に昇進してからの

勤務内容と言えば この やんちゃな

兄の尻拭いが ほとんどではあるのだが...


「だ、誰が そんなこと言いますか!

そんな呼び方 1度もしたことない

じゃないですか!それに 今は軍務の途中

ですから きちんと階級で呼ばないと...」


「ほほう?それなら 軍務以外の

プライベートな 時間ならいいんだな?」


「...バカ言ってないで

さっさと 手伝ってくれますか、少尉。」


さすがに軍曹も怒ったようなので 大人しく

アルゴノートは

報告書を書き上げるのであった。

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