第53話 女神にクレーム
「女神! ねえ、女神! いるんでしょう! いないにしても、私の声は聞こえてるんでしょう! しらばっくれていないで返事しなさいよー!」
一応、相手のターンは黙って耳を傾けてみる。
…………。
返事がない。どういうつもり?
「私のこと、八歳のただの幼女だと思ってナメてる? 不完全な加護を与えておいて、そのまま手当てもせずに逃げ続ける気? それで神ってよく名乗れたものね!」
もう一回だけ返事を待ってみる。
…………。
返事がない。どゆこと!
「絶対に聞こえているはず。聞こえているくせにー‼︎ こんなところまで来させといて何なのよー! 私は不明瞭な点を明確にしたいだけなんですけど? だいたい、最初にそっちが完璧に仕事をやり遂げていたら、こんなことにはなっていないのよ! そっちのせいなんだから協力すべきでしょうが‼︎」
ハアハア。久しぶりに怒鳴ると喉がやられるわ。
「そもそもあなたたち神様っていうのは、私たち人間が幸せに暮らせるように加護を与えるのが仕事なんでしょ?」
マジで、ちゃんと仕事しろっつーの。
「わ、わ、私――」
「やっとかよー! 遅いんだよ! 何ですぐに返事しないかなー」
「ひぃぃ。す、す、す、すみません! すみません! 本当にごめんなさい」
「謝罪はそれくらいでいいわ! それよりも私の質問に答えなさい! 私の声、本当はこれまでだって聞こえていたんじゃないの? 神様なんだから、私がどこにいようと、声は聞こえるんじゃないの? 今まで散々私のことを無視してきたのはどういうつもりなの!」
「ひぃぃ。い、いえっ。ち、ちがっ、違います! 無視だなんて、そんな。た、確かに声は聞こえます。でも、全員の声が――それこそ、数万人の声が聞こえて――」
「あっそ。じゃあ、私はただ呼びかけるんじゃなくて、これからは手を鳴らして合図するわ! これで私かどうか区別できるでしょ?」
「え?」
「何よ? 不満なの?」
「あ、いえ、その――なんというか、その――もうちょっと、もう少しだけ敬うような気持ちで――」
はぁん?
「女神としての仕事も満足にできない見習いのくせして、何を生意気なことを言ってんの!」
「え? えぇぇ! そんな……これでも一人前なんですけど」
「それで一人前? まあ、そんなことはどうでもいいわ。で?」
「……で?」
あーイライラする!
ずっと聞こえていたって言ったよね?
「まず小人!」
「こ、小人?」
「そう、小人よ。あいつら私の言うことをちゃんと聞かないんだけど? ってか、どうして会話できないの? 意思の疎通ができないせいで物凄くストレスが溜まるんですけど?! ちゃんと会話できるようにしてちょうだい!」
「……」
「何よ!」
「い、いえ、あの。ええと……」
「はっきり言いなさいよ。そもそもあなたが私の要望を正確に汲み取らなかったせいでしょう!」
「ひぃぃぃ」
「リーダーだけでもいいから、先頭のやつと話ができるようにしてよね! あっ。それと。あと、小人に触れないっていうのが微妙にムカつくから、会話している時は実体化させてよね。まさかとは思うけど、私が言ったことだけを実装するつもりじゃないでしょうね? 会話っていうのは双方向なんだから、もちろん、小人にもしゃべらせてよ?」
「……」
「ちょっと! 聞いてんの?」
「ひぃぃ。は、はい」
「できるのね?」
「あ、はい」
「あとねぇ……何だっけ? 興奮して忘れちゃったわ……」
「ふぅ」
「思い出したっ! あなたよ、あなた! いつでもどこでも返事しなさいよね! 聞こえているんでしょ? それなら返事だってできるでしょ?」
「あ、あの、その」
「神様なんだから、私が想像できる以上のマルチタスクのはずでしょう!」
「うぅぅぅ。で、でも、人間とそういう関係になるなんて聞いたことがありません――」
「前例がないなら自分で作る! そういう言葉知ってるでしょう!」
「へ? えぇぇ?」
あー、もう!
何だろうなぁ。
私を担当する女神がめちゃくちゃヘタレなんですけど?
「だいたい、あなたって、女神像すらないんだから、本当は教会とかそういうの関係ないんじゃない? あなたを呼び出す方法って何なのよ?」
「……‼︎ よ、呼び出す?」
「『女神召喚!』とか、叫べばいいの? 叫ぶだけなら簡単で助かるんだけど」
「うっ。うぅぅぅ」
「ちょっと! もごもご言ってないで、はっきり答えなさいよ!」
「うぅぅぅ……いいです」
「え? 『女神召喚』でいいのね?」
「いいです……うぅぅ」
「オッケー!」
やったー!
女神とのコンタクト方法が決まったー!
小人とも話せるようになったみたいだし、これならあれこれ細かい指示ができるわ!
「じゃあ、今日はこれくらいでいいわ。必要な時には呼ぶから」
「え?」
「さよなら」
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