羽田支局-ある新人職員の回想


あの日、帰ってくる予定だった兄は帰って来る事はなかった━━━━━━━━━━━━━━━。


変わりに来たのは酷くボロボロになったあの人だった。ウチに来て何か言っていたらしいが記憶にない、どうやら俺はショックでその場で倒れてしまったらしい。だから何を言っていたのかは正直覚えていない。だが、あとから聞いた話だと兄の"帰還報告"だったという。


それを受けた母さんと父さんは酷く泣き、激怒したそうだ。父の方は怒り狂い母の方は1週間程寝込んでしまった。


帰還報告に来た男は斎藤という職員だった。まだ若く、兄と年齢が近しい事もあり俺も良く遊ばせてもらった。そしてあの日…………


あの日、兄のバディだった男だ━━━━━━━━。


兄の死を受け俺と家族は報告に来た斎藤という職員、そして警備部という組織に対して嫌悪感を抱くようになった。斎藤の方には墓参り来るなとまで言ったとか。


兄を撃った犯人は死亡。生きていればそちらに怒りを向ける事が出来たのかもしれない。だけど、既に犯人は死亡。撃ったのは報告に来たのと同じ斎藤だという。


俺ら家族も本心ではわかっていた。この男に負の感情を抱いても何も意味は無い。でも、それ以外無かった。そうする事で現実を受け入れるしか無かった。

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