羽田支局-高橋主任のとある1日

珍しく今日は定時に上がれたので自主トレーニングでもしようと思った。射撃場、羽田支局の地下にあり、職員であれば誰でも利用する事ができる。武器の点検をし、弾を込め準備する。破裂音が響く、煙と焦げ臭い臭いが広まる。今日はイマイチだな…。


斎藤 「アレ〜?何してんのぉ〜?」


後ろから肩を叩かれたので耳栓を外し振り向くと上司が居た。


「何って…見ればわかるじゃないですか、訓練ですよ自主訓練。」


自分のペースを乱されて少し強めに言ってしまった…冷静にならないと。


斎藤 「いやまぁ分かるけどさぁ〜、仕事に関わるんだからこれ残業でしょーダメだよちゃんと付けないと時間。後でつけとくからね〜?」


そういうと上司は横の射撃場で銃を撃ち始めた。


斎藤 …………………


この人を見ると本当に同じ人間なのかと錯覚する。先程までダルい絡みをしてきた上司とはうって変わり無言で銃を撃つ。普段は猫背で局内をうろつく不審者なのにこの時だけは模範的な姿勢をとり鋭い目付きで構える。人殺しの目だ。


斎藤 「ッなんか今日ズレんなー…」


そういう割には的を見ると殆ど弾痕は真ん中だ。どこがズレているのか全く分からない。


「失礼ですが代理、全くズレているように見えないのですが…その、これ以上の精度を要求する必要は…「あるだろ」


自分の嫌味とも聞こえるような質問は食い気味でかき消され、上司は続ける


斎藤 「急所外せないじゃん、少しでもズレたら死ぬんだから。死なないようにすんの、あくまでも殺すのは最後。そいつから聞きたいことは山ほどあるんだ、喋れるくらいにはしとかないと。」


少し間を置いたあとさらに上司は続ける。


「どうせね、俺らがやんなくてもいつか死ぬんだから。死刑なり私刑なり。」


そういう上司の目には光は無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る