第二十八節 裸少女、冥界を往く
天井を
――どこかが地上に
仰いでも裂け目は見つからない。
先導する有尾の
「どうなってるんだろ、ここ。ホントに洞窟の中なのかな?」
「不思議ね。ブナの枯れ木に群生するツキヨタケという毒キノコは、ランプテロフラビンという成分で
「残る可能性は自然放射性物質の鉱床くらいかしら?」
「えっ、それって
どれだけの放射線量があるかは分からないけれど、裸で浴びて良いものではないことは確実。
腕を抱く力を強めると、小夜は柔らかく吹き出す。
「冗談よ。ウランの発光色は緑色だし、原子炉の炉心や使用済み核燃料の貯蔵プールで見える光は青色ね。こんな優しい
「
そばを歩む
一帯に立ち
広大さに距離感が狂いそうだったけれど。
「水中にも光がある!」
小夜の腕を放して駈け寄り、
なだらかに傾斜しながら深まる湖底に光が散点していた。遊泳する深海魚めいた
「すごい」
魅了されていると、柔らかな気配が右隣に寄り添う。
真理亜の左腕が灯の腰を抱く。
「まるで天地がさかさまになったみたいですね。ね、灯ちゃん、今のわたくしたち、妻を追って冥府に
「や、やめてくださいよぅ。だったら、この先にあるのは死者の国になっちゃうじゃないですか」
穏やかな顔が見つめて、
「でも、わたくしたち、あの繭の中で一度死んでしまったのかもしれませんし。だとしたら、ここが死者の国でもおかしくありません」
「でもさ、あの世がホントにあるなら見てみたいじゃん。これって千載一遇のチャンスなんじゃない?」
「みんな元気だなぁ。私、そこまで楽天的にはなれないよ」
理系、文系、好奇心系──分野は異なっても三人とも状況を
礫が上目遣いで見つめ、
「ん~、灯ちゃん、ホントに怖いって思ってる? ボクさ、あの繭から出てきたときから、なんか妙に心が満たされてるんだ。ママの顔なんて覚えてないけど、もし赤ちゃんのとき、おっぱいに抱かれてたらこんな気持ちだったんじゃないかな、って」
「うん、それは分かるよ。私もそんな感じだし」
──それがあの女の子なの?
百名近い
その存在が
──だけど、もし、森そのものが、あの有尾の生き物にとってのコンピュータだとしたら?
背筋が
──あの子がその支配の意志を統括しているの?
「ちょっと、アンタたち、みんな行っちゃうわよ!」
裸少女たちの
小柄な体に信じられないほど大きな乳房を実らせた童顔少女が、高く掲げた右手を振っていた。
「あっ、うん。行こう、灯ちゃんたち」
繭の許に駈け寄っていく礫の裸身に、灯たち三人も続いた。
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