第二十五節 実験槽は騒乱中
白く清潔な掛布団の中で
洗浄機で
べッドサイドの椅子に坐って見つめる美貌は穏やかに目を閉じている。礫たちにも苦痛の色はない。
「真理亜様たち、目を覚ましたら今日のことは忘れているの?」
「みたいね。私が儀式に参加し出してから、記憶を消された子は見てないけれど」
壁際に立つ
窓際のベッドで眠っていた
「そういえば、玲に訊いておきたいことがあったわ」
「なに?」
「あなたもアレに寄生されているのかしら」
「え?」
「
「そ、そんなこと聞いてどうしたいのよ」
「アレをおまたから生やしたら、どれだけ気持ちよくなれるのかしら」
「さあね。また儀式があったら分かるんじゃない?」
頬を赤らめた顔がそっぽを向く。閉じ合わせた太腿が
──そのために用意されてたのが性交っていう快楽なんだよね。
「面白半分で試さないほうがいいよ。
小夜がこちらを見つめて、
「
「実験って?」
「迦陵様は電波を介して操れるようになった。では寄生を受けた人間はどうだろう?」
「じゃあ、美桜様を操っていたのは学院の人たちなの」
「そうよ。そばに置いた迦陵様を媒介させれば可能だったみたいね。
「言い回しが古いよ」
「私の心が未来や過去に行きがちなの、知ってるでしょ」
「まあね」
小夜はおない年の十五歳。五年前まで
かく思う灯も現代になじめてなどいない。
──情報源が偏ってるから、思考も語彙も逸脱するばかり。
「みんな、いつごろ目を覚ますのかな」
ベッドから起き上がった小夜がローファーを履いて、
「電波混信装置の影響は治まったでしょうけれど。記憶消去のための睡眠に落ちているなら、もう少し掛かるかもね」
立ち上がった小夜は玲を見て、
「お手洗いはどこかしら。薬を呑みたいんだけれど」
「廊下に出たら右の突き当りよ。水が欲しいなら持ってこさせるけれど」
玲の視線が壁のインターホンに向かう。
──
小夜は折々に銀色のピルケースから錠剤を取り出して口に運んでいた。
──その力が小夜を人のあいだに繋ぎ止めてる。その絆が断ち切られてしまったら。
考えただけでも背筋が凍る。
小夜のことを思うなら
──でも、それだと白銀の犯罪を
心の天秤が聖邪を量りかねていると、廊下から靴音が響き込んできた。ヒールで無理やり走るような
「みんな逃げて!」
切迫した姿を現した
その印象は窓辺に生じた気配に奪われる。小夜が寝ていたベッドの脇──。
カーテンが開かれた窓に裸の少女が貼りついていた。
ガラスに両
「紗綾さん!?」
三つ編みをふたつ結びにした相貌に感情はない。
木立に
──まさか、みんな操られてるの!?
「灯、玲、廊下に出て!」
小夜がこちらに駈けてくる。
窓際に来た子たちが右手を振りかぶった。
持っているのは、
──石つぶて!
衝突音が連続する。
破砕音が耳を突いてガラス片が撒き散らされた。
白い指先が鍵を動かして窓枠がスライドされる。
「
優愛の声が耳を打つ。
小夜に右手を引かれた。
四人が廊下に出ると優愛が扉を閉める。
鍵が挿し込まれて施錠された。
迫る膨大な気配が裏から扉を揺すぶりだす。
「こっちへ」
連続する打撃音に押されて、廊下を進む優愛のあとに続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます