第二十節 果樹園は乱交パーティー

 微風そよかぜが葉音を立てる。

 肌には陽射しの温かみ。

 ──草の上に横になってるみたい。

 緑と土のものに混じって水の匂い。

 ──森の中? 洞窟にいたはずなのに。

 疲労は取れているのにまぶたが重い。

 ──まだこの甘さに身を委ねてたい。

 

 猫のさかり声のような音が聞こえる。


 ──悲鳴?

 められているのは恐怖でも嫌悪でもない。

 ──喜びなの?

 興味を惹かれて目を開く。

 傘めいた枝葉の隙間から青空が見えた。明るさは正午過ぎ。

 ──あれから時は経ってなさそう。


 なにかがぶら下がっていた。頭上に張り出す太い枝から──。

 ──女の子!?

 跳ね起き立ち上がって振り向き仰ぐ。

 十メートルはある木が聳えていた。四、五人が手を繋いでようやく輪になれるほど太い幹は、すぐに五本に分かれて無数の細枝を広げて、濃密な青葉を茂らせている。

 樹齢の勇壮は、生じた異常に畏怖をまとわせていた。

 

 むらから無数の童女どうじょが吊るし下ろされているのだ。

 

 縊死いしたいめいた二十人ほどに頸縄くびなわはない。頭頂の細枝で太枝に繋がれていた。

 ──ここが迦陵かりょう様の自生地!

 だとしたら、禁域をセントイノセント礼拝堂より奥に入ったところのはず。優愛ゆあたちが運び込んだのだとしても、なぜこんなところに寝かせていたのだろう。

 ──そうだ! 小夜さよれきは?

 巨木に背を向けて周りを窺う。

 草地はすぐ木立に呑まれていた。かげもる霧の中で、もつれあう人影が嬌声を響かせている。

 ──真理亜まりあ様! 礫! まゆ様と永遠とわ様も!?

 認めた姿に駈け出して近寄る。

「みんな──」

 現れた光景に声が凍った。

 

 四人は裸身。

 両膝を掲げて仰向いた礫に永遠がまたがり、陰裂どうしをこすり合わせている。

 膝立ちになった真理亜が、四つん這った繭のお尻に下腹部を打ちつけていた。

 皆こちらには気づかず、体を貪りあっているのだ。

 ──どうしちゃったの?

 後景には霧に裸を溶かして十体以上の迦陵様が立ち並んでいた。攻囲する体勢なのに、皆茫洋と視線を伏せてたたずんでいるだけ。

 ──逃げたほうがいい?

 振り切れても土地勘は皆無。禁域のさらに奥──跋識山ばつしきざんの深部に迷い込めば命の保証はない。


 高い嬌声が耳を打つ。

 繭の腰をつかんだ真理亜がお尻に密着させたふくを痙攣させていた。

 貝合わせには少し体位が不自然。

 ──双頭ディルドを入れてる?

 真理亜が腰を引く。白濁した肉棒が抜き出された。

 ──真理亜様、両性具有ふたなりだってことは、ないよね。

 パンツに顔をうずめたとき感じたのは肉のうねだった。

 快楽の余韻が籠もる呼吸に、鴇色ときいろの乳首がつ巨乳が揺れる。

「ふふ、うふふ」

 充足の笑みをいたれい姿がこちらに向き合う。

「ああ、灯ちゃんもいらしたのね」

 真理亜は両腕を開いて、

「ほら、ご覧になって! 礫ちゃんも、繭ちゃんも、永遠ちゃんも、みぃんな気持ちよくなっている姿を!」

 両手がお祈りの形に組まれた。

「これが迦陵様のたまわってくださる恩寵おんちょうです。さあ、楽園の中にいらしてね」


 体が冷たさに締めつけられる。

「きゃあっ!? なに──あっ」

 二体の迦陵様に抱きつかれていた。

 幼い裸身が密着して腰の奥がおののく。

「ん、んぅ、放してぇ」

 そぐわぬ膂力りょりょくに両腕をつかまれて釘づけにされる。

「そんなに怖がらなくてもいいんですよ」

「真理亜、様」

 口づけできるほど近くに真理亜の裸身があった。

 白皙碧眼の柔和な美貌。ウエーブした亜麻色ロングヘア。巨乳が実る均整の取れた肢体──神々こうごうしいまでの麗容れいようだ。


「ほら、お洋服から楽になられて」

 頸元くびもとに伸びたせんがリボンタイをはずして地面に落とす。

 左腰を撫でた手がホックもはずしてファスナーを下ろした。

 脚を伝い落ちたプリーツミニスカートが靴にべんを広げる。

「ああ」

「ふふふ、最後まで脱いじゃいましょう」

 胸元に伸びた繊指がボタンをはずしていく。

 セーラーブラウスの前がはだけてブラカップがいろどる巨乳の谷間が露出した。

「まあ、やっぱり、灯ちゃんもおっぱいが大きいのね」

「ま、まあ、真理亜様ほどじゃないですけど」

 ──いやいや、なに普通に返答してるんだ!

 真理亜が相手だと、どうしても安心させられてしまうのだ。


「っ、うわっ! った」

 二体の迦陵様に左右の袖山そでやまをつかまれて、セーラーブラウスを引きずり下ろされた。

 気づけば、身に着けているのはブラジャー、パンツ、靴下、ローファーだけ。

 ──どう考えても外でする格好じゃないよなぁ。痴女さんみたい。

「とっても綺麗で、いやらしいです」

 真理亜に抱き寄せられて唇を重ねられた。割り入る舌を心が求めて口を開いてしまう。

 背に触れた手に巧みにホックをはずされて胸の締めつけが緩む。二体の迦陵様に肩のストラップも引き下ろされて乳房が直に晒された。

 唇が離れると、ひざまずく真理亜に両乳房を揉みしだかれていた。


「んんぅ、はあ」

「ああ、灯ちゃんの、大きくて柔らかい」

 右の下乳したちちがすくい持たれて絞り込まれる。

「う、あ!」

「ねえ、やっぱり、ここが気持ちいいですよね」

 右乳首が唇にまれた。先端を舌先がつつきだす。

「くぅ! だめぇ」

 おかまいなくうごめいた舌が離れる。

「あ──」

「ほら、ってきました。こんなに大きく」

「ああ、そんな近くで」

 濡れ膨らむ乳首を間近で見られて、いたたまれなくなる。

「あら、いいのですよ。気持ちいいことには正直にならないと、体に悪いです」

 立ち上がった真理亜が灯の腰に腕をまわして下腹部どうしを密着させた。

「ね、わたくしだって、こんなに」

 隆起が腿のあいだに入ってくる。

 ──これは、なに?


 柔く硬い肉の棒が真理亜の膣口ちつこうから生えていた。


「ああん、繭ちゃんに出したばかりなのに、もう元気になってます」

 真理亜の腰が動いてパンツ越しに灯の陰裂をなぞりだす。

「んっ、これ、なんなんですか。どうしてこんなものが」

男根おとこ様です。迦陵様が信徒に授けてくださる、もうひとつの性器なんですよ。そのおかげで、もっと気持ちよくなれるんです」

 ──そんな無茶なこと!

 うるむ碧眼、紅潮する頬には充足が宿っている。

 耳元に微笑みが近づいて、

「ねえ、灯ちゃん」

「んっ」

 くすぐったさに太腿が閉じて男根おとこ様を挟み込んだ。

「はぁん! ああ、ふふふ、いいことを教えてあげます。男根おとこ様は寄生するんです。膣内なかに出されたら灯ちゃんも子宮から生やすことができるんですよ。この強烈な快感を味わうことができるの!」

 ──ちょ、なにそれ!? あり得ないでしょ!


 左腿の裏を撫でのぼった右手がパンツの中に入る。お尻の左球さきゅうを握り込まれた。

「っは、あ!」 

 谷間を割った人差し指がすぼまりに触れる。

「いやっ! 変なとこさわらないで」

「どうして? 灯ちゃんの体に変なところなんてありません」

「あっ、でも、ん」

 お尻を揺すると脚が開いてしまう。

「ふふふ」

 いんに下りた左指が股布クロッチをずらす。

「ああ」

 涼やかな股間を瞰下みおろすと、亀頭に陰唇を割られていた。

「やぁん、ビラビラが柔らかくて、気持ちいい!」

「あっ、んんぅ。んはっ、あぁ!」

 左指に陰核のまわりをこすられて槍先やりさきのがれる意志が奪われていく。

 ──ちょ、そこだめ。気持ちいいとこなんだからぁ。

 真理亜の柔らかさ、温かさ、甘い匂いが陰裂にもる性感を煽り立てる。

 ──もう、溢れてきちゃう。


 うるおいをなぞる亀頭が膣口ちつこうにもぐり込んだ。

 膜の緩い抵抗に引っかかったとき、

「はっ、はっ! もういきます。出ちゃ、はああん!」

 真理亜の豊かなお尻が痙攣する。

 男根おとこ様が脈打ち、先端からなにかが放出された。

 ──熱い! ホントに精液が出てるの!?

 高ぶりが膣口から引き抜かれる。

「はあ、ああ、まだ出る! まだ出るの!」

 両肩をつかまれて草地に押し倒された。

「ん、あっ!」

「今度は奥まで!」

 灯の太腿を押し開いた真理亜は右手で男根おとこ様を持つ。

 亀頭が陰唇を裂いて、

「ほら、み・つ・け・た。ふふふふ」

 真理亜の腰が前に出る。

 肉襞にくひだを裂く圧が膜の小孔しょうこうを広げだすと──。


「そこまでよ!」

 蔭が射し、声が落ちた。

「その膜を破る権利は私にあるの」

「小夜!」

 灯の顔をまたぎ立つ細脚が、短い襞の囲うしろ逆三角形デルタまで続いていた。

 右親指がブザーのボタンを押し込む。

「っ、あっ、あ、きゃああっ!」

「真理亜様!」

 上体を起こした真理亜は悲鳴を上げながら背を反らし、髪を振り乱して倒れ込んだ。

 男根おとこ様も灯の膣から抜き取られる。

 礫、繭、永遠も悲鳴を上げて昏倒していく。

 取り巻く迦陵様たちも板のように倒れていった。

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