運命の糸
鐘鳴怪
第1話
「あんた、運命の赤い糸で結ばれているって。本気で信じてるの?」幼馴染の
女の子に。そんなことを言われた。運命の赤い糸。人口数億万の中から
運命人を見つけるのは困難に近い。だが、その中から、自分の人生の半分を
共に添い遂げる人が必ず存在するわけだ。俺も、奥野タクト少年もずっと
運命の人を探していた。で、出会えたわけだ。その運命の赤い糸で結ばれた。
俺の半生を一緒に過ごしてくれる。メインヒロインが・・・・・・。
「奥野くん。おはよー」「お、おはよございます。九久ミコトさん《くひさ》」
九久ミコト《くひさ》同じクラスの普通のクラスメイト。長い黒髪がとても
キレイで。誰に対しても優しく接する。おまけに、スタイルは
スーパーモデル並で。まさに、ザ・物語のメインヒロイン級の魅力を持つ。
彼女が、俺の奥野タクトの運命の赤い糸で結ばれている(自称)九久さんは
教室の窓際の席で、俺の席と隣だ。「今日も暑いよね~」
「そうだね・・・・・・」俺のスーパーコミュ障がさく裂してしまった。
分かる。分かるよ。多分、皆はこう思っているんじゃないか?(思い込みの
激しい。陰キャは夢見過ぎ~)って思っているだろうが。それは違う!
これは、けっして陰キャの激しい思い込みではない。俺と九久ミコトは
間違いなく。運命の赤い糸で結ばれているのだ(多分)「はぁー暑い~」
九久さんが、制服のシャツをパタパタと仰ぐ。あぁー俺も九久さんのシャツに
転生したい。こんなバカな妄想をしていると、俺と九久さんの間を割り込む。
人物が現れた。「はい。これ」「うん?」乱雑に俺にお弁当箱が包まれた布を
俺の机に置くのは。「タクト。また、お弁当忘れたでしょう?おばさんが
困っていたよ」この男勝りな言葉の話し方をするのは。俺の小さな頃からの
仲。つまりは幼馴染の
「あぁー悪いな。いつも」「おばさん。かわいそう。こんな忘れ物が多い。
だらしない息子でー」今、そこのモテない同志は。こう思っているのでは
ないかな?「てか、お前ーこんなに可愛い幼馴染がいるのかよー」って。
結論から言うと・・・・・・はい、いますよ。可愛い幼馴染が。花村水樹
淡い栗色のセミロングカットの髪に、キラキラと輝く藍色の瞳が魅力的な
普通だと可愛い女の子って感じじゃないすっか?でもね。中身は狼ですよ。
可愛い子羊に扮した。とんでもない凶暴な狼ちゃんなんですよ。
「うるせえなぁー。お前に、俺の母親の気持ちがわかるのかよ?」俺がこんな風に
ちょっと乱暴に言っても。「わかるわよ。おばさんの気持ちは痛いほど
わかるわよ。あぁーこんな出来損な哀れな我が息子が、これからの先の
社会に生き残れるのか。私、とても心配なの。水樹ちゃんって言ってたよ」
「俺の母さんが、そんなことを・・・・・・母さんごめん。これからは、お弁当
忘れないから。あと、俺ちゃんと社会の荒波に飲まれずに頑張るから」
「ついでに、水樹ちゃんのことも幸せにしなさいよって。おばさん言ってたよ」
「あぁわかったよ。母さん。俺、水樹のことも幸せに・・・・・・って。
そんなことは言ってないだろう?」「おぉ!ナイスなノリツッコミー」見た目は
可愛い子羊でも、中身はお腹を空かせた。凶暴な狼なんだよ。この花村水樹と
言う。俺の幼馴染は。「フフッ」と俺と水樹のやりとりを隣で聞いていた。
九久さんが笑っていた。「二人共面白いよね」「そうかなぁ?」水樹はわざとらしく
小首を傾げた。「だって、二人の話してるのまるで、漫才観てるみたいだよ」
俺と水樹の面白くない。夫婦漫才を観て、面白いって言ってくれた。あぁ~
九久さんは、なんて素敵な子なんだ。まさに、俺の運命の赤い糸の人だ。
キーンコーンカーンコーンとホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴る。
「はーい。お前らー席に着け―ホームルームを始めるぞー」初老の担任が
教室に入って来て。クラスの全員が、自分の席に着くために移動する。
「じゃあ、タクト。ちゃんとお弁当届けたから。あとで、なんか奢ってよね」
そう言って、水樹も自分の席に向かっていた。
「なんなんだよ。アイツ・・・・・・」膨れ面になる。俺の顔を隣の席の
運命の人。九久さんが、俺の耳元に自身の口を近づけ。「今度は、ちゃんと
忘れないようにね。お弁当」と囁いた。俺の膨れ面は、一気に茹でダコのように
真っ赤に染まった。あぁーやっぱり。九久ミコトは、俺の運命の赤い糸で
結ばれているんだなぁーと感じた。月曜日の朝だった。続く
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