第11話 三位一体攻撃
三位一体攻撃の時間稼ぎのために陣形を整え直した。盾を持って防ぐという手段が取れないから、俺達フロント部隊はバラバラに散り、注意を引き付けるような動きをする。そしてバックの魔法部隊も火力を出して倒し切ることをするわけではなく、下級から中級の水魔法を絶えず、打ち続けて徹底的に時間を稼ぐことに徹することにしたのである。
更に運が良かったのはファイアブレスは連発できないようだったのだ。なんでできないのかは分からないがそれも幸いして俺達の時間稼ぎ作戦の滑り出しは良かった。
ファイアブレスを使わない代わりに尻尾での薙ぎ払い攻撃や、腕を突き出し、マナを固めて作った爪で攻撃したり、踏みつけ攻撃をしたりしてきた。
フロントはドレッドドレイクの豊富な攻撃を避け続ける最も危険な場所となっていた。
残念なことにその攻撃で、何人かは死んじまってる。
団長達。早く、三位一体攻撃を決めてくれ。
俺は心の中で祈りながら、怒涛の連続攻撃を避けまくっていた。
しかし最悪なことにドレッドドレイクはもう一度ファイアブレスを使えるようになってしまったようだ。
やばい。これを吐かれたら俺達は全滅してしまう。
「ファイアブレスをキャンセルさせなくては全滅です」
「わかってる。でもどうすればいいか……」
俺とユキノが話している時、ドレッドドレイクの頭上に氷の蓮が咲いた。リリアの最上級水属性魔法白銀氷雪だ。
ファイアブレスをキャンセルさせるまではいかなかったが、少し遅らせることができた。
他のバック部隊のメンバーも最大火力の水属性魔法を放つ。
それのお陰で更にファイアブレスの溜めが遅れる。
目でちらっとバック部隊を見てみるが、全員疲労困憊している。
「今度は私達が」
「全員で顔を斬りつける。行こう」
「おう」
皆は俺の声に応えてくれた。
俺達はドレッドドレイクの顔面まで跳躍し、顔を一気に斬りつける。鱗は温度差によって少し柔らかくなっていたからか、ダメージがかなり通るようになっていた。
ドレッドドレイクは顔面を切り裂かれて血を流したことで、ファイアブレスを吐くところではなくなったのか、ファイアブレスをキャンセルした。
その事実に俺達は雄たけびを上げて喜んだ。
だがドレッドドレイクのプライドは傷ついたのだろう。先程より攻撃が激化し、フロント部隊はほぼ壊滅状態。俺とユキノの二人が残るだけだった。
やばい。バックにも被害が行く。どうすれば。
「団長。まだできないんですか。早くしてください」
叫んだのはいつも冷静なユキノだった。
「下がっていろ」
と団長は叫ぶ。
三パーティのリーダーは体内から放出したマナなのか、別の力なのかよくわからないが眩しいほどに輝いていた。
三人は高く飛び上がり、洞窟の天井すれすれの高度まで行った後、ドレッドドレイクの脳天目掛けて急降下していった。
三人の三位一体の攻撃は遠くから見ると流星のように見えた。
その一撃を受けたドレッドドレイクはかなりのダメージを受けたようで、その場に倒れ込んだ。
「勝った……か?」
「いいえ。魔石が出てきません。しかも姿が消えました」
「そんな……じゃあ生きてる?」
「しかもドレッドドレイクのパッシブは透明化のようですしね」
「皆。冷静になれ。まだ戦いは続いているぞ」
と団長は声を掛ける。
皆は全力で警戒を続けるが、ドレッドドレイクは出てこない。
流石のドレッドドレイクとはいえ、大ダメージを受けて撤退せざるを得なかったんだ。
しばらく臨戦態勢を取りつつ、様子を見ていたがドレッドドレイクが反撃してくることはなかった。
「我々は討伐ミッションに失敗しましたがなんとか生き残ることはできたということになるということですか」
王者の翼の団長がそういうと、他のメンバーも臨戦態勢を取るのを止めていた。
生き残ったことは嬉しい。けど、倒せてれば……
「落ち込まないで。別の機会もあるから」
リリアは俺の気持ちを察して励ましてくれた。
「ありがとうリリア」
と俺は感謝の意を述べた。
「坊主。暗くなってても仕方ねぇ。こっから帰ったら飯の一つや二つ奢ってやるから落ち込むんじゃねぇぞ」
「あっ、ありがとうございます」
俺は勇猛な戦士の団長の意外な態度に驚いていた。
「ストが若者を気にかけるとは。気に入られたということです。よかったですね臨時君」
王者の翼の団長も俺に微笑みかけてくる。
「喜びたまえ臨時君。ここから帰ったら君は臨時君ではなく、正式メンバーだよ」
と団長まで俺のことを買ってくれる。
まぁ、メンバーが大量に死んだからかき集めようっていう意図が多分にあると思うけど。
嬉しいような嬉しくないような、微妙な感情になっていた時衝撃の光景が飛び込んだ。
今の今まで会話していた団長達の首が斬り落とされて、転がり落ちたのである。
それだけではなく、俺達以外に生き残っていたメンバー全員、あっけなく殺されてしまった。
「なんで……」
「ドレッドドレイクが襲撃を仕掛けてきました。構えてください」
とユキノから言われて俺は咄嗟に構えた。
俺とユキノ、リリアはドレッドドレイクの襲撃を見切りなんとか生き残った。
「この俺が逃げ帰るなどと愚かなことを考えやがって。このゴミ共め。じっくりいたぶりながら皆殺しにしてやる」
と喋ったのは肌のところどころに鱗がついている人間の姿をしている竜人(ドラゴノイド)だった。彼は顔からおびただしい血を流しながら俺達のことを睨んでいる。
「畜生が。みんな殺されるなんてそんなことあるかよ」
「落ち着いてください。ここは私が時間を稼ぎますっ」
ユキノが庇おうとした時、ドレッドドレイクはユキノの後ろを取り、思い切り背中を蹴りつけた。
リリアは魔力切れを起こしかけているし、ユキノも限界だ。この中だったらまだ、俺が戦えるか?
「逃げて。こいつに勝つことは不可能です」
「あんたが逃げるのが一番マシ。全滅なんてあっちゃいけないのよ」
二人は逃げろと言うが、俺の答えはもちろん……
「ふざけんな。逃げるわけねぇだろうが。お前らを見捨てるくらいなら俺も死ぬ」
と俺は無理を押し通す。
絶対に生き残ってやる。絶対に生き残ってやるぞ。
「くくく。ピンチ過ぎて冷静な思考力を失ってやがる」
「やけになんかなっちゃいねぇよ」
クソ。あれに懸けるしかねぇ。パッシブコピー。体は千切れてもいい。ユキノのパッシブをコピーさせてくれ。
ユキノのパッシブは超加速と超切断。
剣を扱うには最高に相性の良いパッシブだ。
「てめぇもパッシブを持っていやがったか。だが、てめぇごときがパッシブを使ったからってなにになる」
ドレッドドレイクはなにか少し焦っている。
それにこの体の力が湧き上がる感覚。パッシブの発動が成功した。
片足に力を入れて思い切り地面を蹴ると、体がぶっ壊れそうなくらい加速することができた。それでドレッドドレイクの後ろに回り込み、剣で斬りつける。
「へこへこ剣術じゃ俺を殺せやしねぇよ」
ドレッドドレイクはマナで伸ばした爪で俺の剣術に簡単に対抗している。
「それならこれを見ても同じことが言えるか?」
ドレッドドレイクはパッシブを使い、透明化して攻撃してくる。
俺はなんとなくでしか対抗できず、ドンドン押されていく。
透明化をなんとかしなきゃ勝てねぇ。
俺が思考を巡らせていた時、俺に対する攻撃が止む。
なぜ? と考えていた時、リリアとユキノの二人が倒されていることに気づく。
「で、一人で勝てるのか?」
「キレすぎたぜ俺は」
俺は手に持っている剣をドレッドドレイクに目掛けてぶん投げる。
「馬鹿なことをっ……」
俺はそれに気を取られている間に最大速で接近してドレッドドレイクの顔面を思い切りぶん殴る。
ドレッドドレイクは大きく吹き飛ばされ、岩盤にめり込んでいた。
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