第5話 キャンプデート

 キャンプ地帯のギルド支所で救援手続きを終えた。

「救助申請に二時間もかかるとは。なんかすげぇ疲れたな」

「つーか腹立つのはあの職員共よ。私達がゴールデンレアスライムを追って落とし穴に落ちたっていう話をしてきたらグダグダ説教しやがって。私達は死ぬほど怖い思いをしたっていうのにさぁ」

「マジでな。あの説教が一番しんどかった。もう、そんなのは痛いほど痛感してるって感じだよな」

「本当にね。むしゃくしゃしたし、救助が来るのも一週間後だしその間だけでも遊びましょうか」

「おう。豪遊しようぜ」

「楽しんでやるわよ」

 リリアも俺と一緒になって盛り上がる。

 本当によかった。昨日の弱気なリリアより、強気なリリアの方がやっぱり落ち着くぜ。



「とりあえずあんたの服よ。ボロボロだから見立ててあげる」

「そういやそうだな」

 まぁドレッドドレイクのファイアブレスでちょっと焦げちゃったか? くそ。ついてねぇな。



 キャンプ地帯の商業区はアトラスと同じように発展していた。まぁアトラスに住んでいる人間がアトラスの物を持ち込んでいるから当然なんだろうけど。

 ダンジョンは変化する可能性があるからか、建築された建物とかはない。

 デカいテントがいっぱい並んでいる感じだ。



 服の絵と筆記体で小さく店名が描かれている看板を見つけた。

 店名はモードというらしい。

 おしゃれに絶望的にうとい俺はよくわからなかった。

 まぁ、なんかかっこいい感じなんだろう。多分。

「おしゃれおのぼりさん。ぼうっとしてないでいくわよ」

 リリアは俺がぼうっとしているのをおのぼりさんみたいだと思ったらしい。

 

 リリアは俺の手を引き、スタスタと入っていく。

 辛辣じゃないリリアはただの美少女。俺の方もなんか恥ずかしくなってきた。




 その後の俺はと言うと着せ替え人形になっていた。クラシカルとかストリートとか、もーど?、ごしっく? とかいろいろな感じ。


「どれも似合わないわね。元々が冴えてないから」

 とゲラゲラ笑いやがる。

 リリアめ。俺のときめきを速やかに変換しやがれ。

「じゃあこういうのは?」

 と言ってリリアが渡してきた服はシンプルなデザインのセットコーデだった。

「じゃあこれで」

 俺はリリアに言われた通りの服を買った。 

「あんたに似合う服は私がちゃんと選んであげないとね」

「なんて?」

「別に」

 聞き返したが、彼女はご機嫌な顔だけしてなにも言ってこなかった。




「次はお前の番だ?」

「私が? 私は別にいらないわよ」

「今度はお前が着せ替え人形になるんだよ」

「それじゃああんたの隙な服装を選びなさいよ」

「それじゃあそうさせてもらうせ」

 色々な雰囲気の服装があるが、俺が一番気に入ったのはクラシカルでフェミニンな雰囲気の服だった。リリアらしい上品さと可愛らしさが十二分に発揮されているっていう感じだ。


「あんたはこういう恰好が好きなの?」

「ああ。おまえの良さが良い感じに出てる」

 率直な感想を言う。

「そう。それならここにいる時くらいは着てあげる。言っておくけどカップルって勘違いされたら困るから、帰る時は着替えるから。わかった?」

「おっ、おう……」


 照れ隠し……なのか?


「服の分のお金は私が持つわ。でも荷物はあんたが持ちなさい」

「仕方ねぇな。重い物持てないなんて華奢な女じゃねぇだろうに」

「あん? あんたは荷物持ちでしょ。荷物持ちなんだから私の荷物は持つのよ。一生ね」

「いや。ダンジョンでの関係であって、プライベートは関係ないだろ」

「うるさい。駄目。絶対。これは強制だから」

 と言った瞬間、なにを思ったのだろうか。リリアは顔を赤くしながら俯いていた。


「よくわかんねぇけど落ち着けリリア。皆に見られてる」

「うぅ~。うるさい」

 リリアは唸りながら俺の顔に胸を埋めてきた。

 頭隠して尻隠さずっていう感じだった。


 なんというかカップルだと周囲から誤解されているし、リリアも顔真っ赤だし、すげぇ逃げ出したい気持ちなので、お代だけ出させて店から急いで出て行った。



「腹空いたな。なんか良い店ないかな」

「なんでもいいわよ」

「なんでもいいが一番困るんだよ。魚が食べたいとか肉が食べたいとか。東風か西風がいいとかそういうのあるだろうが」

「じゃあこのお店でいいわよ」

 と言ってリリアが指をさしたのはリーズナブルな価格の食堂だった。

 俺達は注文して席に座る。


「ねぇ。街出てくって言ったらあんたもついてくる?」

「なんだよいきなり」

「今回の件で、私は本当に役に立てなかった」

「お前の最上級魔法がなきゃ少しの隙も作れずに全滅してたよ。お前が役に立ってないなんてありえねぇよ」

「でも。最後は運よ。あんたが怒らせたモンスターがドレッドドレイクに向かってやってくるっていう奇跡が起こらなきゃ私達は全滅してた」

「もう終わったことだし、いちいち落ち込むなって。お前で役立たずっていうなら俺はなんなんだよ。あまり自虐させんなって」

「あんたはドレッドドレイクにビビらなかった。でも私はビビっちゃった。本当に自分にムカつく」

「泣くなよ。生き残ったことを喜べ」

「でも……」

「それにだ。お前がいないと俺はまた貧乏暮らしに逆戻りだぜ。行くなよ。俺のためにさ」

 と言うと、リリアは笑った。


「ふふ。金目当てで私を呼び止めるなんて最低よ」

「そうだ。その方がお前らしい。泣いているなんてお前らしくないよ」

「キザねぇ。あんた」

「うるせぇ」

 確かに柄にもねぇことを言っているような気がした。そのせいか、顔に熱が籠る感じがした。


 その後も俺達はキャンプ地帯を大いに謳歌した。



 夜になり、宿屋へと向かった。

 宿屋に近づくと俺はあることを思い出す。

 疲れで意識することはできなかったが、俺はこいつと同じ部屋で寝てたんだ、と。

 リリアも宿屋の入口に着くやいなや同じことを思い出したようで顔を赤らめる。

「変なこと考えるんじゃないわよ」

「かかか、考えねぇよ」

「ふん。それならいいけど」


 この後、俺は胸のドキドキを抑えながら、リリアと共に寝ることにしたのだった。


 深夜。

 胸がバクバクしてまともに眠れなかった。クソ。疲れてるのにまともに眠れやしねぇ。



「あんたは私のこと抱ける?」

 リリアは俺の背中を突っついてくる。

「なに言ってるんだよ」

 俺の声は裏返る。

「たらればだから。この間聞いた私でシコれると同じ意味だから」

「まさか覚えていたのか?」

 リリアはそれに対して頷く。

「それで?」

「はずいって」

「私は……別に。あんたが言わないなら教えない」

「なんだそりゃ」

「ふん」

「でも……まぁ。可愛いよ。お前は」

 精一杯慣れない誉め言葉を絞り出したが、当の本人は寝ている。

 なんか気が抜け……たな……


 

 救助申請してから一週間後。俺達は救助に来た荒野の狼のメンバーに送ってもらい、地上へと出ることができたのであった。

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