桜の契約結婚~永遠の別れと、せつない恋の調べ~
天野 つむぎ
第1話
「俺達の結婚は政略結婚だ。お互い浮気しようが不倫をしようが関係ない。お互いのことに関して、口を出さないこと。いいな?」
「はい。」
政略結婚。
この時代の中級階級から上級階級ではよくあること。
政略結婚の殆どが親の勝手な都合で好きでもない相手と結婚させられる。
好きな人と結婚できるのは本当に数少ない。
そして本日、私鈴宮玲奈も政略結婚をする予定のお相手と対面します。
お相手は、飯塚裕也。国内でも有数の名家の御曹司。我が鈴宮家が飯塚家と政略結婚できる事自体は夢のまた夢のお話。
のはずだった。
しかし、お互いの父親同士が偶然にも知り合いだったために今回の政略結婚は決まったと言えるだろう。
最初、この政略結婚は瑠奈にきていたが、ワガママで自己中な私の妹は拒否し続けた。
それもそうだろう。
国内でも有数の御曹司である飯塚家の一人息子、飯塚裕也は、無慈悲で冷徹、女性に対して興味がないために今までいくつもの政略結婚をしてきた相手は一週間も経たずに逃げ出したという噂もあるほどだ。
「あっ、ごめぇん!見えなかったぁ」
「...。」
「ねぇ、なんか喋ったら?」
「ごめっ」
「あっ、ゴミだからわかんないかぁ」
「瑠奈、何してるの?」
「お母さま!」
「玲奈、このあと飯塚家がくるんだからさっさときちんとした格好に着替えてらっしゃい」
「はい。」
「瑠奈。挨拶を。」
「はい。お初にお目にかかります。鈴宮玲奈と申します。」
「玲奈さん、これからは裕也と夫婦になる身。そんな固くならなくてもいいのよ。」
「はぁ。」
「僕達は邪魔者だから、早めに退散するとしようか。」
「ええ。そうね。」
「あっ、あの。」
「...。」
「瑠奈でなくて申し訳ございません。もし、嫌でしたら婚約破棄していただいても構いませんので。」
瑠奈が政略結婚を拒否することは、今回が初めてではなかった。
そして、婚約破棄されることもまたたくさん経験してきたことだった。
「...飯塚裕也。」
「えっ?」
「飯塚裕也だ。俺の母親も言っていたことだが、これから夫婦になるのだからそう固くなることはない。」
「えっ、じゃあ婚約破棄は?」
「何を言っている。そんな事するわけ無いだろ。」
「そうですか。」
「なるべく早く迎えに行く。いつ去ってもいいように片付けはしておくこと。良いな?」
「はい。」
はじめてだった。
はじめて婚約破棄を言い渡されなかった。
だからこそ、どこか調子に乗っていたのかもしれない。
こうなる運命だとは何も知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます