心霊アルバイト総決算編
稲富良次
第1話 承前
1980年代神戸
僕は神和大学の教育学部の二回生だ。
六甲祭
演劇部自由劇場(ジゲキ)新人公演
僕は「鴉の仮面」でとんでもない下手を打ってしまった。
主演女優を本番中攫って舞台袖に履けてしまったのだ。
これは翌日の校内新聞で
「演劇部の公演中に本物の「鴉の仮面」を被った賊が現れ
主演女優を襲って逃げて行った」
と報道された。
証拠写真もある。
六甲祭が終わって
演出兼脚本の久保田がインタビューに答えた。
「本物の鴉天狗出現?!
まさか…仕込みですよ・・・
演出、演出。
すぐ主演の北条魔紀が出てきてカーテンコールしたじゃないですか。
なにごともなかったように皆さんにご挨拶・・・
ショーマストゴーオンの精神でアドリブで乗り切ったんじゃあ?
とんでもない!-
僕の本にアドリブは一行だって許しませんよ!
二日目では違う演出になっていて、事故じゃないんですかって?
新人公演なんです。ブラッシュアップは日々当たり前ですよ・・・
ではこれで
秋の本公演、期待してください。
いいもの書きます」
しかし人間の動体視力では追えないほどの素早さ
記録撮影用のフィルムに写ったそれは
本物のカラス天狗のようだったと
後々で神和大学の七不思議の伝説の一つとして語り継がれていった。
とさ・・・
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