第4話

アメリアは毎朝シロがトレーニング場に来ることを知っている。

彼女にとって訓練は日々の日課であり、どの季節であっても、どのような天候であっても欠かしたことはない。

ただ、毎朝、このように様子を見に来る弟の体を案じていた。

小さい頃から体の強くない弟シロは、体調を崩して寝込むことがしばしばあった。

厳しい季節はなおのことである。

そこで、暑い盛りには、あえて暗いうちから訓練を行い、日の出間もなく起きだしてくる“シロのルーティーン”に合わせ、トレーニングを終えるようにしたし、雨の日には屋外での訓練の後に場所を屋内トレーニング場に移し、体が濡れない場所で弟の到着を待った。

もちろんシロがそんな姉の思いやりを知るはずもなく、ただ毎朝、アメリアとの交流を屈託なく楽しんでいる。

風の冷たいこの日、予想外に弟が早く起きてきたので、彼女はトレーニングを途中で中止せざるを得なくなった。

だが、アメリアはとにかく弟に甘い。

苦言を呈するどころか、はしゃぐシロに向かってこう言った。

「ねえ、シロ、そろそろ朝食の準備ができるころよ。

そうだ、家まで競争しない?

どっちが早いかしら?」

言い終える前に館に向かって走り始めたアメリア。

「ちょ…、そんなのズルいよ!」

シロは慌ててその後を追った。


ヴェントゥムの秋が深まる季節。

庭の色づいたプラタナスの葉が、2人の姿を優しく見送っていた。



館に戻ると、アメリアはメイドにシロの着替えの手伝いを頼み、自身はシャワールームで汗を流した後、自室で身支度を整えながら、ホログラムジェクターに映し出されるニュースの音声をぼんやりと聞いていた。

 『西大陸コルエムのアウェディ国で、水資源プラントの調印式が行われました。 

今回の調印式には、ヴェントゥムに本社を置くメルカン社代表のバルトロ・メルカン氏がこの地を訪れ…”』

父と母の無事を神に感謝しながら、長い髪をとかす。

『ここで速報です。

今朝未明に発生したアルファゼマ州の古城襲撃事件についての続報です。

騎士団憲兵隊の広報官の発表で、死者は500名を超えるとのこと。

なお、同氏はこれをテロとして捜査を進める方針…』

そのニュースを聞いて、アメリアはくしを置いた。

アルファゼマ州は、館があるテラの街から1000キロ以上離れた王国南端の州であったが、そこで起こった恐ろしい事件は、平和な世界しか知らない若いアメリアにとって、たいへんな衝撃であった。


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