不老不死の少女は自由になりたい

@Qula

1.運命の出会いは唐突にやってくる。

 目覚めるとそこは平原に佇む一本の樹の真下だった。


涼しい風がゆっくりと吹く秋の正午頃。




「また死ねなかった、、、」




 私は木陰で荷物に肩を掛けながらボソリと呟いた。分かっていたことだ。こんなことで死ねたなら2000年前に死んでいる。




「どこに行こう、、、」




 私は遠くの草を見ながら呟いた。この世界にやりたいことはもうない。今はただ目的のない旅を永遠と続けている。いつか終わりが来ると信じて、、、











 突然ですが、私は不老不死という呪い能力を持っている。いつこんな呪い能力を授かったのかはわからない。




 ただ、自分が不老不死と気がついたのはお父さんお母さんが死んだときだった。






 私は国境付近の小さな村で生まれた。


 家族も村のみんなもみんな優しい。そんな住心地のいい平穏で素敵な場所だった。




 そんな私の平穏が崩れたのは、私が40歳になったときだった。私の容姿が17歳になって以降一切変わらなくなったのだ。




 30代の内は、「若々しい」や「羨ましい」などの羨望の眼差しを向けられていた。実際美容についてはよく聞かれていたと思う。




 しかし、40代になっては話が別だ。みんなの羨望の眼差しは、気づけば得体のしれない何かを見る目に変わった。いつまで経っても容姿が変わらない私を、家族以外のみんなは恐れていた。




 50を過ぎたあたり両親が死んだ。私の容姿は以前変わらなかった。




 その時村のみんなは親族殺しの罪として濡れ衣を被せてきた。怖かったのだろう、いつまでも容姿が変わらない私が、、、




 親殺しは重罪だ。


 他人を殺す何倍も罪が重い。私の死刑は確定だった。






 首を切られたとき時はもう人生が終わるんだと思った。


 だけど終わらなかった。冷たい土の中で私は再び目を覚ました。当時のことはあまり覚えてない。ただ得体のしれない自分への恐怖と殺された憎しみ、家族を失った悲しみで複雑な感情だったのは覚えている。




 私は旅に出た。なにか目的があったわけではない、この現実から目を背けるために何かをしたかったのだろう。それに、村にすでに死んだ私の居場所なんてある分けがなかった。




 結論から言えば私は旅が大好きになった。旅で起こるたくさんの出会いと別れ、何より長くても数年の付き合いというものは私と相性が良かった。




 そして旅をしていくうちに目標が出来た。不老不死を克服するという目標だ。


 しかし、1000年ほど旅をし様々なことをしたが無駄だったので諦めてしまった。今思えばあの時が旅で一番楽しかった気がする。死を目指してたときが一番楽しかったというのは皮肉なものだけど、、、











「ここから近場の村までは10時間かかるし、、、」




 私は草原の脇に最低限舗装された道を歩きながら、今日泊まる人里を目指し歩いていた。野宿でも悪くはないができればベットで寝たい。さらに言えば温かいご飯と温かい場所がほしい。そんなことを考えながら歩いていると、、、




「あの、大丈夫ですか?」




 後ろから一人の男の人に話しかけられた。黒い髪の18歳くらいの青年で少し高身長だ。


おそらく装備からして冒険者をしながら商人をしている人だろう。


 話しかけるのも無理はない。今の私の容姿は、首には縄の後が付いており、銀髪の髪が肩までかかっているが三日ほど樹にぶら下がってたこともあり少しボサボサだ。空色の瞳は澄んでいるがどこか疲れ切っている。不老不死の呪い能力を知らない一般人からしたら今の私は自殺失敗し再度挑戦しようとしてる危険な人だ。実際はもう自殺してるが、、、




「あ、大丈夫です。」




 私はそそくさと離れた。冒険者と絡んでもいいことはない。冒険者と聞けば聞こえはいいかもしれないが要は荒くれ者の集団だ。関わってもろくなことはない。




「いや絶対大丈夫じゃないですよね!?」




 その男はしつこかった。頑固な汚れよりしつこかった。何度も大丈夫と言って離れようとしてもついてきた。まあ、ちゃんと話しかければ助かったかもしれない人が次の日冷たくなってたら、目覚めは悪いだろう。だけど面倒事にはなんとしても巻き込まれたくなかった。




「あそこの木陰でずっと本読んでただけなんですって!!」




「じゃあその首の縄の後は何なんだよ!?」




 御尤もだった。首に縄の後あって疲れ切った目の人間の「自殺なんかしません」なんて信用できるはずがなかった。











太陽が沈み、星の淡い光と月だけが土を照らす時間。




「本当に自殺なんてする予定ないですよ?」




 焚き火に当たりながらそう言った。折れた。私は折れた。まさか何時間も追いかけられるとは思わなかった。おそらく彼は、自ら面倒事に足を突っ込むタイプなのだろう。




「言いたくないなら別にいいですよ?ただ辛いことがあったら何でも相談してくださいね?」




 優しさからくる平和ボケタイプだったかもしれない。ただ、どちらにしよ荒くれ者の冒険者には似つかわしくない人だった。




「俺はオリヴァって言います。冒険者と商人をしながら食いつないでいます。良ければ名前を教えてくれます?」




「私はカーリナ。旅人をしてる。旅の日記を出版して旅費を稼いでる。」




簡素な自己紹介だけどこれでいいと思った。長くても一ヶ月程度の付き合いだと思ったからだ。だから考えもしなかった。




この出会いが何万年も続く出会いになるなんて、、、

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