夜空星空
あゆうみあやの
夜空星空
夜空の下、好きな人と歩く時間は幸せに満ちている。
時間が永遠に止まればいいのに。そうしたら私の心はずっと幸せ。
「なに見てるの?」
その好きな人はずっと星空を眺めていた。
彼の横顔を眺めるのも好きだけれど、こっちを見て欲しいなんてことを思うのは恋のせい。
思いっきり吸い込んだ冷たい空気が鼻にツンとした痛みを与えた。
「オリオン座」
彼の言葉に釣られて私も夜空を眺めるけれど、オリオン座は見つからない。
そもそもオリオン座がどんなものなのかも曖昧だ。
「どこにあるの?」
星空から目を離さない彼の横顔はどこか浮世離れしていた。
自分のものにしたい。そんな欲望が私を支配した。
「どこかにある」
彼の目もまだオリオン座を捉えていないみたいだ。
オリオン座になりたい。
そうしたら私を見てくれるのに。
「どんな形なの?」
「わからない」
彼の言葉に困惑した。
わからないものをさがしているの?
そんなの見つかりっこない。
「調べようか? オリオン座」
かじかんだ手でスマホを操作しようとすると彼に止められた。
触れた手。
目が合う。
それだけで私の心は熱を帯びた。
「見えないままでもいい。きっとどこかにあるから。それだけでいいんだ」
彼の声は他の誰かを思っているような気がした。
彼の目はもっともっと広い世界を捉えているような気がした。
この恋は叶わない。そう悟った。
夜空星空 あゆうみあやの @amatsukaze_aya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます