ヒストリア

ヒストリアは、大のツンツンツンデレ。

頭は普通よりは良いが、恋愛などのことには頭が回らない。

ここに来るきっかけとなった恋人と心中した話も、恋愛に無知すぎたせい。

その恋人もヒストリアには甘いから、結局バカップルのまま終わった。

どうしてこうなったのか?

いまだに過去を思い出す。


きっかけは些細な事だった。

ヒストリアは目が見えない。

過去の自虐のせいで。

だから不安だった。

本当の自分を知って彼が絶望しないか。

別れようなんて言ってこないかと。


恋愛に無知なヒストリアは、こう考えた。

嫌われる前に殺してしまえば良いのではないか。

そうしたら、永遠に彼は自分のものとなる。

彼も、ヒストリア以外はいない。

つまり、永遠の愛で結ばれるのではないかと。

それに、最後に自分も死んでしまえばいいそう考えた。


しかし、ヒストリアには死ぬことに抵抗があった。

過去にあった巨大地震や津波……

世に言う大震災。

その時まだ幼かったヒストリアにその出来事は深く突き刺さった。あの日、逃げ遅れたヒストリアを助けてくれた大好きな姉。

ヒストリアは姉のおかげでなんとか助かった。

けれども、そのせいで姉は助からなかった。

瓦礫の山と一緒に津波に飲まれてしまった。

ヒストリアの目の前で。

あの日津波がなかったら、姉はきっと助かった。

あの日地震がなかったら、何もかもが日常通りで平穏だった。

つまり、ヒストリアの姉は、地震と津波に命を奪われたのだ。


あの日の恐怖がこぞってと帰ってきた。

まるで、あの時攻めてきた大津波のように。

だめだ。

死ねない。

どうしよう?

どうやってゴールしよう。

そうだ……

あそこなら楽に死ねるのでは……?


最近噂のあのトンネル……



そうして、ヒストリアは、あののトンネルへと行った。

そして彼を殺した。

ヒストリアは、不気味なトンネルの中で血に濡れた手を見つめながら、死ななきゃと思っていた。

その時、背後から1人の子供が声をかけてきた。

その子は、母親より先に死んでしまって暇だからと、自殺を手伝ったりすると言う。

ヒストリアはその子に殺してもらった。

だけども全く死んだ感覚がない。

でも確かにヒストリアは死んだ。

このトンネルで。

けれどもまだ、死を受け入れられていない。

時には、まだ自分は生きているんだと錯覚する時もある。

同じトンネルで死んだはずの彼は見当たらない。

ヒストリアはまだ、彼を探し続けている。


今、この瞬間も。



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