第9話 説教
「たくっ、お前って奴は...今に始まった事じゃねぇけど、場所を考えろ! たまたまお客さんが俺達だけだったから店員さんからも軽い注意だけで済んだが、普通に考えれば迷惑だろうがお店に!」
「すみません.....」
全員商品を購入後、速やかにコンビニの外へ引っ張り出された俺は、頭に出来た大きなたんこぶから白い煙りを発しながら、平祐による説教を受けている途中だ。
俺は背中から制服を平祐に掴まれ、強引に連れて来られたが、女の子であるシェイラには特に何もせず軽く言いつけるだけ。
こいつも男だから女の子には優しいのはもちろん分かる。だが、こう言う時の女の子は非常にズルく羨ましい。
まぁ、大声で騒いでいたのはほぼ俺。さすがに反省しています.....。
あの時はシェイラと心が繋がれた気がして、その嬉しさからスーパーハイテンションになってしまっていた...その時の嬉しい感情が抑えられなかった...!
クソッ...これだから美人は厄介だぜ。
「おい、聞いてんのかぁ?」
「ハイ,キイテマス」
ギョロっと睨んでくる平祐に身を縮める俺は、ガクガクと震えながら冷や汗をかく。
「ま、まぁまぁ...私もちょっと大騒ぎしてしまったですし...私も滝斗の先輩もちゃんと反省しているですから、この辺で許して欲しいです」
俺と平祐の前に割り込んで入ってきたシェイラが、平祐に許しを乞う。
シェイラの言葉に平祐は少し黙り込むと、ハァっと短いため息を吐く。
「分かった。あまり言い過ぎてもあれだしな。だが、本当に限度はしっかりと守ってくれ滝斗」
「ハイッ.....」
シェイラはホッと胸を撫で下ろし、身を縮める俺へと振り返ると、俺と視線が合うようにしゃがんで話しかけてくる。
「それにしても、滝斗の先輩はたこのこの里が好きだったんですね。もう長く一緒に居るですけど、知らなかったです」
シェイラに手を握られて、まるで天国へと連れて行かれるかのように優しく引っ張られながら立ち上がる。
あぁ、これがいわゆる天使って存在なんだな...。俺は内心でボソッとそう呟く。
「まぁ、こいつ...きのこの山もたこのこの里も両方普通に食ってるしな」
「ですね~」
「ほら、さっさと滝斗の家に行って飯食うぞ」
俺が立ち上がった所を見ると、平祐は再び足を動かし始めた...その時だった。
プルルルルル.....プルルルルル.....
「おん?」
突然、平祐のズボンポケットからスマホの着信音が鳴り響く。スマホを取り出した平祐は、スマホの画面を見て誰からの着信かを確認する。
「あ、母さんからだわ。ちょっと待ってて」
そう言うと、平祐はスマホ画面を操作して少しその場から離れると、スマホの先端を耳に当てて電話を始めた。
一方俺とシェイラは、平祐の指示に従いその場で待つ事に。しかし、俺はシェイラとある事が発生している。
肩を並べて隣に立つシェイラの、少し下に視線を向ける...そこには、俺の右手とシェイラの左手で繋がっている所が視界に映る。
そう、さっきシェイラに手を握られて引っ張って貰
ってから、シェイラは意識していないのか分からないが、そのまま普通に手を繋いでいるのだ。
シェイラの手はサラサラでスベスベ...握っているだけで無駄に手汗をかいてしまいそうだ。
だが、大好きなシェイラと手を繋げている事に、俺はジッと繋いだ手を見ながらのほほんと微笑む。
「.....?」
俺の視線を感じたのか、シェイラは俺の方へ顔を向けると、下を見る俺に一瞬首を傾げるシェイラだが、すぐにシェイラも同じく下に視線を向ける。
そして、シェイラにも俺と手が繋がっている光景が視界に映る。
俺が微笑んでいる理由が分かったシェイラは、ポッと頬を赤らめて、すぐに手を離されてしまった。
片方の頬をプクッと膨らませたまま、ムゥと上目遣いで見つめてくるシェイラに、俺はまた心を撃たれる。
「すまんすまん、待たせたな」
そうこうしている間に、電話を終えた平祐が俺とシェイラの元へと戻ってくる。
「悪い、今ちょっと急用が入った。だから今日はここでお別れだ」
「えっ? どしたの?」
平祐の言葉に首を傾げた俺は、平祐にそう問う。
「まぁ、ちょっと親戚がな...。とりあえず、急用なんだ。母さんが今からここまで向かいくるみたいだから、ここでお別れだ」
親戚...その言葉を聞いた時、俺は少なくとも良い事ではないだろうと判断し、深く追及するのはダメだろう。
「分かった。何か知らんけど、気をつけてな」
「おう、お気遣いサンキュ」
俺はシェイラへ振り向く。
「なら、このまま帰りましょうです」
「そうだな」
俺はシェイラと一緒に、平祐の横を通り過ぎ、コンビニの敷地内から出ていく。
「んじゃなー平祐」
「おう、また学校でなー」
そう平祐と言葉を交わし合い、シェイラと2人きりでの下校が始まる。
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