第14話 闇ギルド!
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ヒナタの父親は、ジャスパーのボスである。それ故に幼い頃から、非合法な事に抵抗はなく、寧ろ外国の闇ギルドから、日ノ国を守る正義側だと信じていた。
何せ、この世界はカーネリアンという凶悪な組織に、裏から支配されつつある。
カーネリアンは、歯向かう者には政府だろうと報復する。警察や検察の身内が世界各地で大勢殺されており、その凶悪さで抵抗する意思を削っていた。
それ故に、カーネリアンの部下を捕まえても、報復を恐れて不起訴処分する事が多い。悪が野放しで、外国人にやられたい放題なのが今の社会である。
窃盗、放火、強姦、殺人、何をやっても大抵は不起訴処分。
そこでジャスパーの様な闇ギルドが、政府に代わってカーネリアンを追い出そうとするのは、わりと世界的に見ても珍しくない。
何も失う物がない者同士が争う事で、少しは社会の治安がマシになっている。
そう考えれると、ヒナタが考える正義というのも案外間違っていないのかも知れない。勿論、ジャスパーも闇ギルドとされるだけあって、悪い事はしている。
だが所詮は、希少なアイテムや研究資料を奪う程度の事だ。そのアイテムや研究資料も悪事に利用せず、基本的には社会を豊かにする為の開発を目的としていた。
つまり闇ギルドの中では、かなりマシな部類。少なくともヒナタはそう思っていた。
『お待たせしました! 第2回戦の準備が整いました』
試合会場の入り口。ギリギリ出場時間に間に合ったヒナタ。森にいた時と格好は変わらない。急いで移動してきたのだろう、少し息が切れていた。
「遅かったな?」
ヒナタが来るのをリンネは待ち伏せしていたらしい。腕組みして、バチバチとオーラが迸り、リンネは少し興奮した様子を隠し切れていない。
「久しいな、リンネ。お手柔らかに頼むわ」
初めて会う訳ではない。彼女達は幼馴染であり、何度か戦った経験がある。昔はヒナタは勝っていたのだが、現在は負け越している。
ヒナタの体が衰弱した事もあるが、リンネも強くなった事も理由の一つだろう。
「私に勝てるとしたら、お前くらいだからな。楽しみにしてるぞ。手加減なしで戦おう。最近は相手にして貰えなかったからな。かなり退屈していたんだ」
ただ強いだけならプロと戦えばいい。しかし強者と戦う事は、ライバル視に繋がらず張り合いを欠く。リンネとしては、同じくらいの天才と戦う事が最も楽しいのだろう。
「噂じゃ、アイリちゃんもおるんやろ? 準決勝で、あの子に負けたら私と戦えんけど大丈夫そうなん?」
ヒナタとしてもアイリは高く評価している。まだ試合経験が少なく、本気を出している姿は見た事がない。
だが、モンスターの細かく丁寧な動きを見る限り、凄まじい才能なのは見て取れた。
「……思ったよりも強そうだな。試合中に少し遠くからアイツのオーラを見ていたが、かなり強かったな。恐らく本気を出せば、私やお前と同等だろう」
オーラの強さは、テイマー補正の強さ。つまり相手のオーラを見れば、相手の素質が分かるのだ。
故にテイマーは基本的にオーラの気配を抑え、実力を偽る者が大半だ。だが、近い才能を持つ者であれば隠蔽は効果を持たない。
アイリの繊細なオーラの隠蔽を、リンネは当然の様に見抜いていた。
「……私やアンタと同等ねぇ。シノンちゃんもそうやけど、私達の同世代は流石に豊作すぎやな。歴代の世界王者を超える才能ばかりやんか。しかも全員が日ノ国出身……。何か良くない事の予兆やないとええけど……」
ヒナタは暗に〈特例指定モンスター〉が起こした現象なのではないかと言っている。実際はゲーム会社の社長が暴走して、第一部のキャラを強くし過ぎただけだが、当然ヒナタは知る由もない。
事情を知らない彼女の思考として、特例指定モンスターを原因だと考えるのは至極当然である。
この世界には幾つも伝説があり、実際に特別指定モンスターが起こした災害の歴史は、各地に残っているのだ。
〈第二種族スキル〉を持つ存在――特例指定モンスター。多くの人にとって伝説だけの存在であり、実際に確認された例は非常に少ない。
だが
故に通常では考えられない現象が起きた時、特例指定モンスターを想起するのは、この世界の人々にとっては自然な事だと言えた。
――――――――
〈あとがき〉
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