第13話 アビリティ


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 稀に〈アビリティ〉という、モンスターに影響を与える力を持つテイマーが存在する。



〈アビリティ〉

 選ばれし者。全属性のモンスターをテイム可能。テイムできるモンスターのランクを一段階上昇させる。この効果により、S級モンスターもテイム可能。




 ゲームの第一部は、ユーザーから〈インフレ全盛期〉とネタ扱いを受けるほど、チート扱いのアビリティが幾つも登場していた。



 アイリのアビリティ〈選ばれし者〉も、その一つである。


 加えて――。



〈テイマー補正〉

 基礎能力20%上昇。体感時間強化30%上昇。種族スキル強化30%上昇。レベルアップ時の魔力値80%上昇固定。



 彼女はテイマー補正にも優れている。



 〈レベルアップ時の魔力値上昇〉は、現世界王者のミヒャエルですら60%。そして世界大会予選突破したテイマーであれば、前年平均24%程度。



 そう考えれば、彼女がどれだけ優れた才能を持つのか理解できるだろう。



「――メラドラ」



 闘技場。アイリが立っていた。白シャツに橙色の上着。黒い短パン。相変わらず明るい色の服を好んでおり、非常に整った顔立ちも相俟ってよく目立つ。



「グオオォ……」



 一瞬で彼女の隣に、体長3メートルの赤い竜――メラドラが現れる。



 このメラドラはドルイ博士曰く、特殊個体。



 通常、そこまでテイムの難易度が高くないB級モンスターであるメラドラなのに、アイリ以外にはテイムできなかったらしい。




 しかし、当然と言えば当然だ。博士やアイリも気づいていないが、メラドラと呼ばれている外皮の赤いドラゴンは、新種のSランクモンスターである。



 見た目は通常のメラドラと瓜二つだが、完全に別の種族だ。



 本来の力はレベル100。まだ生まれたばかりで魂が未熟故に、力を全て発揮できていないだけ。そこらのモンスターと比べ、遥か格上の存在である。



『試合開始‼』



 ヘッドセットマイクを着用した審判の声が響くと同時、試合開始の鐘が響く。



「――いけ」



 短い命令。しかしアイリの言葉には、繊細に命令式が編み込まれており、その実力は、世界大会に出場する平均的実力を超えている。



「グオオオ!」



 命令式を受け取り、メラドラは吠えて真っ直ぐ相手に突進する。



「グエグエ…!?」



 相手のカエル系モンスターが声を上げ、反撃しようとするが、ひらりとグラゴンに躱されて、呆気なく腹をぶん殴られた。



空剣刺突くうけんしとつ

 無属性の攻撃。威力120。命中85。



 命中率が低いがアイリの優れた命令式により補っていた。



 あまりにも基礎能力に差があると、試合が盛り上がらないと思い、アイリは気を遣ってメラドラの基礎能力を下げていたが――――。



『試合終了――――ッ!』



 相手選手が棄権を選択した事で、試合が終わってしまう。



 たった一撃だが、テイマーとしての実力に差があり過ぎるという判断だ。



 魂に意識があるので、モンスターは肉体で思考していない。つまり肉体が滅びてもテイマーに魂を預けていれば死なないのだ。



 しかし痛みを感じない訳じゃない。



 体が傷つけば痛みを感じ、体力が減れば疲れを覚える。



 だから変に意地を張って、勝てもしない試合を続けるのは、ただモンスターを悪戯に傷つけるだけ。そういう判断で、相手は棄権した。



「――戻れ」



 先ずは一勝。アイリは溜息を漏らし、踵を返した。



「グオオン……」



 試合に勝ち満足気な様子のメラドラは、肉体を魔力に戻して霧の様に消えた。



「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」



 呆気ない勝利だが、圧倒的勝利という事でもある。試合会場は噂通りアイリが強い事に熱狂していた。



――――――――

〈あとがき〉


【★】してくれると嬉しいです!!


 モチベが上がります!!






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