第13話 アビリティ
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稀に〈アビリティ〉という、モンスターに影響を与える力を持つテイマーが存在する。
〈アビリティ〉
選ばれし者。全属性のモンスターをテイム可能。テイムできるモンスターのランクを一段階上昇させる。この効果により、S級モンスターもテイム可能。
ゲームの第一部は、ユーザーから〈インフレ全盛期〉とネタ扱いを受けるほど、チート扱いのアビリティが幾つも登場していた。
アイリのアビリティ〈選ばれし者〉も、その一つである。
加えて――。
〈テイマー補正〉
基礎能力20%上昇。体感時間強化30%上昇。種族スキル強化30%上昇。レベルアップ時の魔力値80%上昇固定。
彼女はテイマー補正にも優れている。
〈レベルアップ時の魔力値上昇〉は、現世界王者のミヒャエルですら60%。そして世界大会予選突破したテイマーであれば、前年平均24%程度。
そう考えれば、彼女がどれだけ優れた才能を持つのか理解できるだろう。
「――メラドラ」
闘技場。アイリが立っていた。白シャツに橙色の上着。黒い短パン。相変わらず明るい色の服を好んでおり、非常に整った顔立ちも相俟ってよく目立つ。
「グオオォ……」
一瞬で彼女の隣に、体長3メートルの赤い竜――メラドラが現れる。
このメラドラはドルイ博士曰く、特殊個体。
通常、そこまでテイムの難易度が高くないB級モンスターであるメラドラなのに、アイリ以外にはテイムできなかったらしい。
しかし、当然と言えば当然だ。博士やアイリも気づいていないが、メラドラと呼ばれている外皮の赤いドラゴンは、新種のSランクモンスターである。
見た目は通常のメラドラと瓜二つだが、完全に別の種族だ。
本来の力はレベル100。まだ生まれたばかりで魂が未熟故に、力を全て発揮できていないだけ。そこらのモンスターと比べ、遥か格上の存在である。
『試合開始‼』
ヘッドセットマイクを着用した審判の声が響くと同時、試合開始の鐘が響く。
「――いけ」
短い命令。しかしアイリの言葉には、繊細に命令式が編み込まれており、その実力は、世界大会に出場する平均的実力を超えている。
「グオオオ!」
命令式を受け取り、メラドラは吠えて真っ直ぐ相手に突進する。
「グエグエ…!?」
相手のカエル系モンスターが声を上げ、反撃しようとするが、ひらりとグラゴンに躱されて、呆気なく腹をぶん殴られた。
【
無属性の攻撃。威力120。命中85。
命中率が低いがアイリの優れた命令式により補っていた。
あまりにも基礎能力に差があると、試合が盛り上がらないと思い、アイリは気を遣ってメラドラの基礎能力を下げていたが――――。
『試合終了――――ッ!』
相手選手が棄権を選択した事で、試合が終わってしまう。
たった一撃だが、テイマーとしての実力に差があり過ぎるという判断だ。
魂に意識があるので、モンスターは肉体で思考していない。つまり肉体が滅びてもテイマーに魂を預けていれば死なないのだ。
しかし痛みを感じない訳じゃない。
体が傷つけば痛みを感じ、体力が減れば疲れを覚える。
だから変に意地を張って、勝てもしない試合を続けるのは、ただモンスターを悪戯に傷つけるだけ。そういう判断で、相手は棄権した。
「――戻れ」
先ずは一勝。アイリは溜息を漏らし、踵を返した。
「グオオン……」
試合に勝ち満足気な様子のメラドラは、肉体を魔力に戻して霧の様に消えた。
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
呆気ない勝利だが、圧倒的勝利という事でもある。試合会場は噂通りアイリが強い事に熱狂していた。
――――――――
〈あとがき〉
【★】してくれると嬉しいです!!
モチベが上がります!!
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