第12話

朝の柔らかな光が部屋に差し込み、奈々はまだ目を閉じたまま布団の中にいた。頭の中には昨日の圭吾の言葉が何度も繰り返されている。


「奈々、無理しないでほしい。」


ただの励ましの言葉だと思っていたはずなのに、その響きは胸の奥でいつまでも鳴り続けていた。

彼の声、その眼差し、その優しさがまるで特別な魔法のように心を温かく包み込んでいる。


布団の中で考えるほどに、奈々の胸はざわつき始めた。


「私、圭吾のことを…好きかもしれない。」


その言葉を自分に言い聞かせるのは、少し怖くて、それでいて心地よかった。

ずっと意識していなかったけれど、彼のことを考えると自然と顔がほころんでしまう自分がいた。


学校の廊下、友達の声が遠くに聞こえる。だが奈々の意識はいつの間にか圭吾のことに向かっていた。

彼と話した日のこと、笑い合った瞬間、ふと見つめられた視線が胸に刺さる。


そんな自分に戸惑いながらも、少しずつ認めていく。


「ああ、これが恋なんだ。」


放課後の教室、誰もいない静かな空間でスマホを取り出す。

画面には圭吾からのメッセージが光っていた。


『今日も頑張ってね。奈々のこと、ずっと応援してる。』


その文字を何度も読み返し、自然と頬が緩む。

手にしたスマホが温かく感じられた。


「ありがとう、私も頑張る。」


小さくつぶやき、奈々はこれからの未来にほんの少しの期待と希望を抱いた。


心の奥で芽生えた気持ちは、まだ不安定で揺れているけれど、確かに彼女の中で輝き始めていた。

この先どんなことがあっても、圭吾の存在が大きな支えになることを奈々は感じていた。

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