あなたの隣、意味がわかると怖い話。

龍月みぃ

おともだち(甘口)

わたしのともだちは、いつもいっしょにあそんでくれるの。

あんまりしゃべらないけど、でも、かならずそばにいてくれる。

ママとパパにはみえないから、「あたまのなかにいるんだよ」って。でも、ほんとうにいるんだもん。


ときどきね、わたしがおへやにいると、おもちゃがほんのすこしだけうごくの。ほんのちょっとだけ。

よる、さむいときには、おふとんをくびまでかけてくれる。

わたしのともだちは、かくれんぼがすき。みつからないときもあるけど、そういうときは、つめたいかぜがふいて、ちかくにいるんだなってわかるの。


このまえ、ともだちと「かごめかごめ」をしてあそんだの。わたし、そのうたしらなかったんだけど、ともだちがおしえてくれた。くるくるまわって、うしろのしょうめんがだれかあてるの、むずかしかったなあ。

それからね、ともだちが、きれいなビーだまをくれた。ちょっとだけ、ふるくて、くもってたけど、ひかりにあてるとキラキラするんだ。


きのう、ママがおでかけしたあと、ママのへやのひきだしをこっそりのぞいちゃった。

おくのほうに、ちいさなはこがあって、あけてみたら、ふるいしゃしんがはいってたの。

しらないあかちゃんのしゃしんだった。わたしじゃない。あかちゃんはね、ちいさな、もくばのおもちゃをにぎってた。


そのあと、わたしのへやにもどったら、ともだちがえをかいてくれた。

それはね、しゃしんのあかちゃんがもってたのと、おんなじもくばのえだったの。

わたし、びっくりして、ともだちに「このもくば、しってるの?」ってきいたけど、ともだちはなにもいわなかった。


よるごはんのとき、ママにしゃしんのことをきいてみた。

「ママ、このあかちゃんだあれ?このもくば、かわいいね」

そしたらママ、すこしだけかなしいかおをして、わたしのあたまをなでて、「そうね、とってもかわいいもくばね」って、それだけしかいわなかった。


わたしのともだちは、さいこうなんだ。


解説


ねえ、この子の「おともだち」の正体、もうわかったかしら?

古い遊びやビー玉、そしてお母さんの引き出しにあった赤ちゃんの写真と、おともだちが描いた「同じ木馬の絵」。


もしかしたら、その「おともだち」は、主人公が生まれる前にいた、お兄ちゃんかお姉ちゃんなのかもしれないわね。写真の赤ちゃんがその子で、大切にしていた木馬を絵で教えてくれたのかも。


お母さんが語らない家族の秘密と、それに寄り添う優しい存在。甘口だけど、胸の奥が少し温かくなるような、そんなお話よ。

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