第20話:ワンダーループの出口と最後の問い

🚪🌍「きみは、世界と どう つながる?」


空は白かった。


まっさらで、何の模様もない。

色もない、音もない、重さもない。

なのに――どこか“満たされた感じ”があった。


ポッドが静かに止まる。

ドアの先には、何もない空間。

けれどその中央に、ぽつんと浮かぶ一つの扉があった。


無地で、古くも新しくもない。

けれど、不思議なことに、3人ともその扉に見覚えがあった。


「……これって、最初に見た夢の中に出てきたやつじゃない?」

アカリがつぶやく。


「うん。いや、“知ってる”って感じかな。

でも、まだ開けたことはないっていう……」


リオが扉に一歩近づくと、そこにふわりと現れるのは、今まで旅してきた記憶の粒たち。


甘くふくらむかるめ焼き🍬


光と音が重なったシンフォニー🎶


パチッと弾けた静電気⚡


推し色で染まったペンライト🌈


空中のキーボードに触れた感触🖐️


それらが、音もなく、やさしく空を流れていた。


その中に、ユリスの声が響く。


《きみたちのワンダーループは、これで終わりです。

でも、“終わり”とは、世界と向き合う準備ができた“はじまり”でもあります。》


「……なんか、さみしいけど、納得できる」

リオが、そっと手をポケットに入れた。


そこには、かすかに残る“熱”があった。

焼き芋の、光の、誰かとふれた手の――記憶。


アカリが静かに言った。


「たくさんの“ふしぎ”に出会ってきたけど、

本当に変わったのは、きっと“自分の目”なんだと思う」


「うん。

世界はずっとそこにあった。

でも、見方が変わると、“初めて出会った”ように感じるんだな」


カイが扉に手をかけようとした、そのとき。


ユリスが、最後の言葉を告げた。


《最後にひとつだけ、“問い”を残します。》

《――きみは、世界とどうつながっていきますか?》


静寂。


けれど、すぐに3人の顔に、それぞれ違う笑みが浮かんだ。


「全部に答えなくていいんだ。

でも、ずっと考え続けていけるって思える」

「自分の足で感じて、ふれて、まちがってもいいから……

ちゃんと見ていこうって思える」

「だって、“ふしぎ”は、世界にも、自分にも、ずっとあるんだから」


3人が手をそろえて、扉を押す。


光が差し込み、風が吹く。

ドアの向こうには、“いつもの世界”が広がっていた。

けれどもう、それは――まったく新しい“現実”だった。




🌈ワンダーループ:世界はふしぎでできている。

さわって、感じて、まなぶ20の旅。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る