第12話:レーザーと光のまっすぐな誓い
🔦📐「ぶつかっても、折れずに届く道がある」
ポッドのドアが開いた瞬間、まぶしい光が走った。
目の前には、どこまでも続く光の道。
それは空中に浮かんでいて、くっきりとまっすぐに伸びていた。
天井も床もなく、ただ無限の闇を貫く1本の光線。
「わ、まぶしっ……」
リオが目を細める。
「これ、レーザー……だよね?」
「でも、どうしてこんなにまっすぐなんだろ」
アカリがそっと手をかざすと、光が手の輪郭に沿ってくっきりと影を落とした。
「まるで、“道を決めてる”って感じ」
そのとき、どこからか音が響いた。
コーン……コーン……
何かがぶつかる音。
ふと見ると、遠くのほうで光の道に鏡の板がゆっくりと現れ、斜めに立ちはだかった。
次の瞬間――
光はその鏡に当たってキリリと跳ね返り、別の方向へ折れて進み出した。
「わあっ……! 曲がった!?」
「いや、反射したんだ!」
カイが身を乗り出す。
《ようこそ、“光の誓いの道”へ。
ここでは、“光のまっすぐな生き方”と、
“まっすぐが届かないときの選択”について、学んでいきます。》
ユリスの声が、いつもより少しだけかっこよく響いた。
《光は、まっすぐ進む性質を持っています。
それは、“何もない空間”でも、“空気の中”でも、
迷わず、止まらず、まっすぐ。
だから、レーザー光線はブレない道しるべになれるのです。》
「でも、壁にぶつかったら、どうなるの?」
リオの質問に答えるように、再び鏡が現れた。
光はそこで止まることなく――角度を保ったまま跳ね返る。
「進めないとき、戻るんじゃなくて、“折れて進む”んだ……」
「それって……」
アカリがポツリとつぶやいた。
「まっすぐをあきらめてないってことじゃない?」
「うん。
だって、進む先が変わっても、光は折れたまま、ちゃんと届こうとしてる」
ユリスがそっと言葉を重ねる。
《反射とは、光が“ただ戻る”のではなく、
“形を変えて進もうとする力”のことです。
進めないとき、ぶつかったとき、
その場にとどまるのではなく――
方向を変えて、なおも届こうとする。》
「……強いな」
カイがつぶやく。
「でも、なんかやさしくもある。
届くために、あえて角度を変えるって、
“相手に届きたい”っていう気持ちがある証拠じゃん」
光の道の先に、小さなゴールの光が浮かんでいた。
そこには、まっすぐ届いたものもあれば、いったん反射して折れながらたどり着いたものもある。
でも、どれも――ちゃんとゴールにたどり着いていた。
「どんなに曲がっても、ちゃんと届くって、
……いいね」
リオの声が、まっすぐに響いた。
ポッドが次の旅へと、そっと浮かびあがる。
その背中を、光の道が見送っていた。
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