転生名探偵は謎を解かずに世界を救う

ろくろはやし

プロローグ

だいたいさ──

真実なんて、求めてるやつほど、いざ自分が突きつけられると目を逸らすんだよ。


人は嘘をつく。

大人も、子どもも、男も女も。

親も、先生も、友達も、恋人も。。。

大義名分を無理やりこじつけて「正義のために」なんて言っとけば何でも許されると思ってる。

でも実際のところ、みんな守ってるのは“自分自身”なんだよな。


真実なんて、正直どうでもいい。

正しさなんか求めるほどに、誰もそれを直視できやしない。

俺の名前は神代春太(かみしろしゅんた)。

17歳の高校生2年生。ちょっとだけ頭のキレる探偵気取り。


渋谷を騒がせた連続毒殺事件――

被害者は7人。

マスコミが騒ぎ立ててる間に、俺は犯人を突き止めた。

証拠は揃ってた。動機も、手口も、全部。


……そして、俺はその夜、毒殺された。


紅茶に仕込まれたのは、ごくわずかの神経毒。

味はしなかった。

喉を通ったときには、ただ、静かに、身体が動かなくなっていった。


静かに崩れ落ちる感覚。

視界が歪んでいく。

世界が終わる音は、意外と静かだ。

ああ、こんなふうに俺の人生は終わるのか。


死ぬ時ってのはあっというまで、走馬灯なんてないんだなあ。

最後に考えたのは、それだけだった。

──そして、

意識が闇に沈むその瞬間、

耳元に誰かの声が響いた。


『その頭脳を、異世界でも使ってくれ』


──最後に聞いたその声だけが、鮮明に残っている。

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