なんとなくの輪郭

人紛い

なんとなくの輪郭

なんとなく、日記を書き始めようと思った。


なんとなくと言いながら、ぼんやりとした理由はある。ひとつは、自分の感情や考えを大切にしたいと思ったからだ。


「自分を持っている人」とは何だろう、と考える。まず浮かんだのは、何か譲れないこだわりを持っている人だった。でも、ただこだわりがあるだけで、本当に「自分を持っている」と言えるのだろうか。むしろ、こだわりが人を縛ることもあるのではないかとも思う。時には、言葉そのものが人を縛っているようにも感じる。

「こだわりを持つ=自分を持つ」と短絡的に結びつけるのは、なんとなく怖い。こだわりにこだわりすぎると、それから外れるものを無意識に捨ててしまう気がする。


初雪が降ると、なんとなく嬉しくなる。自分は雪が好きなのだと思う。けれど、雪が続けば、雪かきや交通渋滞、電車の遅延で嫌になる。じゃあ、雪が嫌いになったからといって、自分の輪郭が壊れたのだろうか。たぶん、違う。自分は変わっているけれど、変わっていない。人はそんな曖昧な存在なのだと思う。


「なんとなく」を大切にしたい。昔好きだったものを嫌いになっても、自分は自分だ。こだわりなんて持たずに、「なんとなく」生きていくことが、自分らしさなのかもしれない。


ただ、こだわりがないと「自分らしさがない」と感じてしまうこともある。

だから、いっそ「こだわらないこと」にこだわってみようと思う。

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