第24話 信の珠と銃声の誓い ― 小牧・長久手の戦い
三つヶ珠の導きに従い、小文吾は尾張の地へと歩を進めていた。そこは、豊臣家と徳川家の緊張が最高潮に達した小牧長久手。戦火の匂いは、遠い町にも届いている。
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南蛮の技と火薬師の魂
戦場のすぐ外れ、鉄砲隊の野営地に響くのは、火縄銃の試射音と、薬研を擦る乾いた拍子音。黒衣に白い鉢巻を締めた男が、じっと空を見据えている。
> 「我が名は犬村大角。南蛮の火薬に学びし火薬師。破壊を望まず、守りの力に目醒めんとす」
大角はかつて、火薬がもたらす破壊に魅せられ、数多の城壁を崩した。だが霊玉「信」の導きにより、彼の胸に宿ったのは――仲間を、民を守る誓いだった。
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小牧・長久手の陣で
天正十二年、一月。小牧山の徳川勢と、長久手に布陣した豊臣勢は互いににらみ合う。両陣営の間を、長さ百間にも及ぶ鉄砲列が横たわる。
だが戦の均衡を破ったのは、敵味方を問わぬ一発の銃声だった。狙われたのは、後方で傷を癒す町民の治療所。誤って放たれた一発が屋根を打ち抜き、火薬庫に引火しかねない。
絶体絶命の瞬間、大角が駆けた。
> 「信の珠よ――その力、我に!」
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信の力、盾と化す
大角が「信の珠」を掲げると、彼の周囲を淡い白銀の光が包む。薬袋から取り出した火薬を――粉塵となり、盾のように展開。閃光と共に炸裂した銃弾は、粉塵の層に阻まれ、民家への被害を最小限に食い止めた。
同時に、大角は火縄銃を構え直す。狙いを定め、敵の狙撃手を一人だけ正確に撃ち抜く。その一射が、長久手の小競り合いに決定的な静寂をもたらした。
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銃声の先にあるもの
皓々たる夜明け、戦場に静寂が戻る。大角は光を収め、膝をついたまま静かに息を整えた。町民の安堵の息遣いが、彼の背中を押す。
> 「我が火薬は、破壊のままでは終わらぬ。信を胸に、命を護る盾となれ――」
その言葉と共に、粉塵の残響から白く輝く「信の珠」が現れる。守るべきものを思い、火薬師は新たな誓いを胸に刻んだ。
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さらなる旅路へ
悌、忠、誠、義、信――五つの珠を携え、小文吾と大角は尾張の野を後にする。次なる導きは、再び 西。だが、その先には「裏切り」の影が渦巻く 対馬 の海峡が待ち受けているという。
> 小文吾の旅は、やがて「六道の門」へと交わり、すべての珠が真の力を解き放つ――。
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