第18話 篠路ダンジョン
受付を終え、篠路ダンジョンの入口に、四人の男女が立っている。
石化耐性を持つメンバーが募られて集まった四人だが、フユナが直接集めたというよりは、知り合いのシズノがメンバー集めに走り回ってくれたようなものだった。
ただ、タイゾウに関してはなかなか承諾が得られず、フユナ自身も直接出向いて依頼した経緯がある。
「もうここの深層に行くつもりはなかったんだがな」
タイゾウは33歳の男でボサボサの髪を無造作に後ろへと流している。
タンカー役で探索者歴は19年のベテラン。
この篠路ダンジョンの開拓を専門に進めてきた第一人者であったが、ここ数年は浅層でちまちまとゴルゴンを狩り、日々の酒代を稼ぐだけの生活をしていた。
「ごちゃごちゃ言わないの。フユナちゃんの頼みなんだから」
シズノは茶色の髪をボーイッシュショートにした24歳の女で、弓を使うアタッカーである。
フユナとは2年前からの付き合いで、両親のいないフユナを当初から妹のように可愛がり、フユナもシズノのことを実の姉のように慕っていた。
「やれやれ。フユナのことになると鬼嫁になりやがる」
「いつからあんたの嫁になったのよ」
「じゃあ今日からなれよ」
「ば、バッカじゃないの! あんた!」
シズノが顔を真っ赤にして吼えた。
「僕もお手伝いできて光栄ですよ」
それをとりなすように穏やかな笑顔で割り込むのは、タカシ。
25歳の
バフでメンバーのステータスを底上げしながら、攻撃魔法でわずかながらも火力の支援ができる。
「みなさん、心から感謝している。ほとんど初見で戦い方に慣れるところからだが、どうかよろしくお願いしたい」
フユナが何度目か知れず、集まってくれたメンバーに頭を下げる。
「フユナとシズノがいるなら、火力は申し分ないな。ではぼちぼちいくか」
「タイゾウ、タンクなんだからちゃんとリードしてよ」
「あのな、シズノ」
タイゾウがシズノを振り返る。
「なによ」
「うまくいったら隣で晩酌しろよ」
「誰があんたみたいなオジサンと飲みに行くのよ」
「約束したからな」
「してないでしょ、バカ! 私は忙しいの」
二人のやりとりにフユナとタカシが忍び笑いを漏らす中、四人は午前10時30分からダンジョン入りした。
◇◆◇◆◇◆◇
第八階層から、ゴルゴンが現れ始めた。
それでも広い室内に一体だけである。
この四人での行動は初めてであるが、皆パーティプレイには慣れており、息の合わせ方は初対面とは思えないほどであった。
シズノのアドバイスもあり、今日のフユナはいつもの装備に加え、左手に盾を持って参戦している。
石化の視線を遮りやすくするためで、小型で軽めのラウンドシールドを選んだのは、重心がいつもとズレすぎないようにするためである。
四肢の防具はこの盾以外はつけていない。
フユナは攻撃を防ぐというより回避で応じることが多く、素早さ低下を避ける方が重要と考えているからである。
なお、彼女がタイトミニスカートを好むのは、裾のヒラヒラをいちいち気にするのが面倒だからである。
「フユナちゃん、そんな簡単には【石化】はもらわないから、怖がらなくて大丈夫よ」
「はい」
正直、ゴルゴンの姿を見ただけでフユナの足はすくむほどだったが、シズノが事細かに教えてくれるおかげもあって、徐々にいつもの調子で戦いに向き合えるようになった。
いうまでもなく、フユナ以外はこの篠路ダンジョンでゴルゴンとの戦闘経験が十分にある。
(これは……怯えすぎていたか)
シズノの言う通り、ちらと目が合うくらいでは石化しないことがわかっただけでも、フユナの気持ちはぐっと楽になった。
ゴルゴンが石化の能力を発揮する時の流れも決まっていて、何度も間近で観察し、覚え込むことができた。
石化の視線を放つ際は、まずヘビの髪がわさり、とざわつく。
次に牙を見せながら、アァァ……という唸り声を発する。
そして、目が青白く光る。
この一連の流れから逸脱することは決してない。
青白く光った目を3秒以上見つめてしまうと、石化を受けるとシズノが言っていた。
なお、石化自体は足元から始まり、3分くらいかけてゆっくりと全身へと進行するという。
その間にアイテム【万能薬】なり、解除魔法なりを使えば事なきを得る。
もし石化が完了してしまうと、今度は【万能薬】ではなく【生命の息吹】という希少アイテムが必要になる。
現状、こういった治療アイテム類は製作できず、ダンジョンドロップでしか手に入れることができないため、【万能薬】はひとつ80万円、【生命の息吹】はひとつ200万円ととんでもなく値が張る。
が、フユナはこの日のために相当数を買い込んであった。
(恐れることはない)
最悪石化したとしても、3分の猶予があるし、回復手段もあるのだから。
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